2027年度(令和9年度)中学入試の募集要項がそろってくると、受験回の組み方に「同じ学校を2回以上受けると有利になる」という要素が絡んでくる。受験料の割引は以前から広く知られているが、それとは別に、合否判定そのものを動かす優遇制度を要項に明記する学校がある。

この記事では、2027年度の生徒募集要項を公開済みの7校について、複数回受験がどう合否に効くのかを各校公式の要項から拾い出して整理した。日本大学第二中学校のように2027年度から新しく制度を導入する学校もある。数値はすべて2027年度(令和9年度)版の要項に記載されたもので、前年度の資料は使っていない。

複数回受験の優遇には「加点型」と「繰り上げ型」がある

要項を読み比べると、複数回受験の優遇は大きく2つに分かれる。1つは、2回目以降の入試の合計得点に決まった点数を上乗せする加点型。もう1つは、正規合格の判定は変えないが、欠員が出たときの繰り上げ合格の対象を複数回受験者に絞るタイプだ。

加点型は点数がはっきり示されるため効果が見えやすい。一方の繰り上げ型は、要項の「受験料」や「合格発表」の欄に小さく注記されていることが多く、見落とされやすい。どちらも「同じ学校を複数回受けた受験生を優先する」という点では同じ方向を向いているが、出願の設計に与える意味は違う。

得点に直接加点する4校

加点を明記しているのは、栄東中学校・開智未来中学校・麗澤中学校・日本大学第二中学校の4校だった。加点される回と点数は次のとおり。

学校(所在地) 加点される入試 条件 加点
栄東中学校(埼玉) Ⅲ入試(1月16日・70名・300点満点) Ⅰ入試(1月10日)・Ⅱ入試(1月11日)・東大特待(1月12日)のいずれかを受験していること 合計得点に30点(国語・算数各10点、社会・理科各5点)
開智未来中学校(埼玉) T未来(1月12日) 第1回(1月10日)または算数1科(1月11日)を受験していること 10点
麗澤中学校(千葉) 第2回(1月25日)・第3回(1月28日午後) 第1回(1月21日)を受験していること 5点
日本大学第二中学校(東京) 第2回(2月3日) 第1回(2月1日)と第2回を同時出願し、第1回で不合格となっていること 2科受験者3点、4科受験者5点

加点幅が最も大きいのは栄東中学校で、Ⅲ入試の合計得点に30点が上乗せされる。300点満点に対して1割にあたる点数で、国語・算数に各10点、社会・理科に各5点と内訳まで示されている。ただし帰国生Ⅲ入試には加点がないと要項に明記されている点は注意したい。受験料は25,000円で2回まで出願でき、3回以上はプラス10,000円で5回まで出願できる設計になっている。

開智未来中学校の10点加点は、1月12日の「T未来」に向けたものだ。1月10日の「第1回」または1月11日の「算数1科」を受けた受験生がT未来を受験すると10点が加点され、特待合格の可能性が広がると要項に書かれている。さらに1月14日の「第2回」では、第2回の判定に加えて再受験生に「振り返り判定」を行う。同校の受験料は20,000円で、本校の複数回に加えて開智中学校・開智日本橋学園中学校・開智望中等教育学校・開智所沢中等教育学校・開智横浜国際中学校(仮称)を含む開智学園6校のすべてを受験できる。

麗澤中学校の5点は、他の優遇と重ねられるところに特徴がある。同校の優遇措置は「①実用英語技能検定の資格取得者(3級5点・準2級および準2級プラス10点・2級以上15点)」「②帰国生15点」「③複数回受験者5点」の3本立てで、①と②は重複しないが、③は①または②と合算される。要項の優遇パターン表では、英検2級以上を持つ複数回受験者は第2回・第3回で20点、帰国生の複数回受験者も20点と示されている。検定料は各回22,000円、2回目以降は1回11,000円だ。

日本大学第二中学校は2027年度から加点を新設

日本大学第二中学校は、2027年度入試から国語・算数の2科入試を選べるようにするとともに、第1回・第2回入試の同時出願者への優遇制度を新しく導入する。同時出願をした受験生が第1回で不合格となり第2回を受験した場合、第2回の査定時に2科受験者へ3点、4科受験者へ5点を加点する。繰り上げ候補も加点した状態で順位付けをすると要項に書かれており、加点は正規合格の判定だけでなく繰り上げの順番にも効く。

条件は「同時出願」であることだ。第1回(または第2回)の入学検定料30,000円を支払い終えたあとに、あらためて第2回(または第1回)へ出願した場合は同時出願とみなさない、と要項が明記している。同時出願なら検定料は2回分で40,000円になり、別々に出願した60,000円より20,000円安い。第1回で合格した場合は第2回を受験できないため、加点はあくまで「第1回で届かなかった受験生への2度目の機会」という位置づけになる。

項目 第1回 第2回
試験日 2027年2月1日(月)午前 2027年2月3日(水)午前
募集人数 男子74名・女子74名 男子40名・女子40名
試験科目 4科(国算理社)または2科(国算) 4科(国算理社)または2科(国算)
配点 2科200点満点・4科300点満点(国語50分100点、算数50分100点、社会・理科50分で各50点) 同左
出願締切 2027年1月31日(日)12:00 2027年2月2日(火)17:00
入学検定料 30,000円(第1回・第2回の同時出願は40,000円) 30,000円(同左)

繰り上げ合格の対象を複数回受験者に絞る3校

加点はないが、繰り上げ合格の対象を複数回受験者に限定すると要項に書いている学校もある。攻玉社中学校・大宮開成中学校・芝浦工業大学附属中学校の3校で確認できた。

学校(所在地) 要項の記載 対象となる入試
攻玉社中学校(東京) 繰り上げ合格を行う場合は、複数回受験した受験生のみを対象とする 第1回(2月1日・男子90名)、第2回(2月2日・男子70名)、特別選抜(2月5日・A/B方式計40名)
大宮開成中学校(埼玉) 繰上合格は「複数回受験者(2回受験または3回受験)」を対象に選抜する 第1回(1月10日午前・70名)、特待生選抜(1月12日午前・30名)、第2回(1月14日午前・30名)の4科目入試。算数選抜入試(1月12日午後・20名)は繰上合格の対象外
芝浦工業大学附属中学校(東京) 第1回・第2回受験者優遇。繰り上げ合格のある場合には、この中から2月5日夕方に連絡する 第1回(2月1日・90名)、第2回(2月2日・45名)

攻玉社中学校は一般学級の受験料が30,000円、2月5日の特別選抜が15,000円で、一般学級と特別選抜を組み合わせれば「複数回受験」の条件を満たせる。大宮開成中学校は、繰上合格の対象になるのが4科目入試(第1回・特待生選抜・第2回)に限られ、算数1科目の算数選抜入試は対象外と明示している点が重要だ。同校の受験料は初回25,000円、2回目以降は1回5,000円で、同時出願でなくても割引が適用される。

芝浦工業大学附属中学校は、2月1日の第1回(90名)と2月2日の第2回(45名)の受験者を優遇し、繰り上げ合格がある場合は2月5日夕方に連絡すると要項に書いている。2月2日午後には言語・探究入試と英語入試も実施されるが、繰り上げの優遇対象として挙げられているのは第1回と第2回だ。受験料は30,000円、2回同時申込で50,000円、3回同時申込で60,000円となる。

受験料の割引は「優遇」とは別の制度

複数回同時出願で検定料が下がる学校は多いが、それは費用の話であって、合否判定を動かす制度ではない。2027年度の要項を確認した範囲では、次の3校は複数回同時出願による検定料の割引を設けている一方で、複数回受験そのものを加点する規定は要項に記載されていなかった。

学校 1回 2回同時出願 3回同時出願
森村学園中等部(神奈川) 25,000円 30,000円 35,000円
恵泉女学園中学校(東京) 25,000円 40,000円 50,000円
獨協中学校(東京) 25,000円 40,000円 50,000円

恵泉女学園中学校は割引の期限を切っており、1月30日23時59分までに複数回同時出願をした場合に限って2回40,000円・3回50,000円となり、1月31日0時以降の出願は同時出願であっても1回あたり25,000円になる。獨協中学校の割引は第2回(午後)を除く第1回・第3回・第4回の組み合わせが対象だ。城北埼玉中学校のように、初回受験料26,000円が最初から2回分の同時出願を含み、追加出願は1回5,000円という設計の学校もある。

保護者・受験生への影響と対策

第一に、併願校の「2回目」は最初から出願しておくという判断が現実味を帯びる。日本大学第二中学校のように同時出願が加点の条件になっている学校では、第1回の結果を見てから第2回に出願すると加点を受けられない。検定料も割引の対象外になる。1月中の出願段階で「第1回で届かなかったときに第2回を受けるか」をあらかじめ決めておく必要がある。

第二に、加点の大きさを持ち偏差値の感覚と結び付けて考えることだ。栄東中学校の30点は300点満点の10%にあたり、Ⅰ入試やⅡ入試を受けたうえでⅢ入試に臨む受験生と、Ⅲ入試だけを受ける受験生では、合格ラインの見え方が変わる。麗澤中学校のように英検の加点と合算できる学校では、英検2級以上を持つ複数回受験者は20点の上乗せになる。

第三に、繰り上げ型の学校では「1回だけ受ける」選択が持つ意味が変わる。攻玉社中学校や大宮開成中学校では、1回しか受けていない受験生は欠員が出ても繰り上げの候補に入らない。第一志望として臨む学校であれば、繰り上げまで視野に入れて受験回を組む価値がある。大宮開成中学校の算数選抜入試のように、複数回受験に数えられても繰上合格の対象にならない回がある点にも注意したい。

第四に、要項の読む場所を決めておくことだ。加点は「合否判定」「選抜方法」の欄に、繰り上げの優遇は「受験料」「合格発表」「繰り上げ合格」の欄に書かれていることが多い。学校説明会の資料やウェブサイトの概要ページには載らず、要項のPDFにだけ注記されている例もある。志望校が決まったら、要項を1回分ずつではなく通しで読むのが安全だ。

今後のスケジュール

時期 確認すること
2026年9月〜10月 東京・神奈川の私立中学が2027年度の募集要項を順次公開。複数回受験の優遇は要項の公開後でないと確定しない
2026年12月1日〜 埼玉県の私立中学でWeb出願が開始(大宮開成中学校は12月1日9:00、開智未来中学校も12月1日9:00)
2026年12月17日〜 麗澤中学校の出願開始(第1回〜第3回の複数回同時出願も受付)
2026年12月20日〜 日本大学第二中学校の出願情報の入力開始(出願受付は2027年1月10日0:00から)
2027年1月10日〜 埼玉入試開始。栄東中学校Ⅰ入試、開智未来中学校第1回、大宮開成中学校第1回
2027年1月21日〜 麗澤中学校第1回。第2回(1月25日)・第3回(1月28日午後)で複数回受験の加点が効く
2027年2月1日〜 東京・神奈川入試開始。攻玉社中学校第1回、芝浦工業大学附属中学校第1回、日本大学第二中学校第1回

よくある質問

複数回受験の加点があれば、1回目で合格ラインに届かなくても逆転できますか。

加点は合計得点に上乗せされるため、合格ラインとの差が加点の範囲内であれば結果が変わる可能性はある。栄東中学校のⅢ入試は30点、麗澤中学校の第2回・第3回は5点(英検2級以上との合算で20点)、日本大学第二中学校の第2回は2科3点・4科5点だ。ただし回ごとに問題も受験者層も変わるため、加点だけで合否が決まるわけではない。加点は「同じ実力なら複数回受けた受験生を優先する」程度の重みと考え、1回目の得点を上げる努力と切り離さないほうがよい。

受験料の割引がある学校は、複数回受験で合否も有利になりますか。

別の制度なので、割引があるからといって加点や繰り上げの優遇があるとは限らない。森村学園中等部・恵泉女学園中学校・獨協中学校の2027年度要項では、複数回同時出願による検定料の割引は定められているが、複数回受験そのものを加点する規定は記載されていない。逆に大宮開成中学校のように、割引(初回25,000円・2回目以降5,000円)と繰上合格の対象限定の両方を設けている学校もある。志望校の要項で、費用の欄と合否判定の欄を別々に確認してほしい。

複数回受験の優遇は帰国生入試でも適用されますか。

学校によって扱いが分かれる。栄東中学校は「帰国生Ⅲ入試には加点はありません」と要項に明記しており、一般のⅢ入試とは扱いが異なる。一方で麗澤中学校は、帰国生への15点加点と複数回受験の5点を合算して20点とするパターンを要項の表で示している。帰国生入試は一般入試と別要項になっている学校も多いため、帰国生として出願する場合は該当する要項を個別に確認する必要がある。

なお本記事の数値は、2026年9月14日時点で各校が公開している2027年度(令和9年度)生徒募集要項に基づく。要項は今後改訂される場合があるため、出願前には必ず各校公式サイトの最新版を確認してほしい。

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出典

最終更新: 2026年9月14日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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合格之助(中村先生)
合格之助(中村先生)

中学受験専門塾で長年、受験生と保護者の進路相談を担当している中村です。偏差値・倍率・過去問傾向・学校ごとの出題特徴をもとに、志望校選びをわかりやすくサポートしています。

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