2027年度の中学入試は、12月1日から順に出願が始まります。出願画面で手が止まりやすいのが、コース(クラス)別に募集する学校の「志望コース」欄です。上位コースを第1志望にしたとき、その基準に届かなかったら不合格になるのか、それとも下位コースでの合格になるのか。関西では「回し合格」、首都圏では「スライド合格」と呼ばれる仕組みですが、制度の有無と呼び名、判定の順序は学校ごとにまったく違います。

そこで、コース別・クラス別に募集する私立中13校の2027年度(令和9年度)募集要項を公式サイトと要項PDFで確認し、(1)出願時に志望コースを選ぶのか選ばないのか、(2)第1志望の基準に達しなかったときに下位コースで判定されるのか、(3)逆に上位コースへ上がる仕組みがあるのか、を募集人員・試験日つきで整理しました。数値・日程はいずれも出典時点の公表内容です。出願前に各校の最新の募集要項でご確認ください。

「回し合格」「スライド合格」の3つの型

今回確認した13校の要項は、判定の設計で大きく3つに分かれました。同じ「コース制」でも、出願のときに決めることと、当日の得点で決まることの境目が違います。

型 出願時にすること 判定のしかた 該当校(今回確認分)
A 志望順を書く型 第1志望・第2志望(学校によっては第3志望)のコースを選んで出願 第1志望の合格基準に達しなければ、第2志望以下のコースで合否を判定 大阪桐蔭中学校、帝塚山中学校、近畿大学附属中学校、桃山学院中学校、淑徳与野中学校
B 選ばない型 コース欄がない(全コース共通の試験を受ける) 合計点の順にコースを割り当てる。志望の申告が結果に影響しない 開明中学校、清風中学校、清風南海中学校、二松学舎大学附属柏中学校
C 上位へ上がる型 コースまたはクラスを指定して出願 得点が高ければ上位コース・特待クラスでの合格や指定に切り替わる 清風南海中学校、開智未来中学校、開智中学校、清風中学校

注意したいのは、B型とC型は同じ学校の中で併存しうる点です。清風南海は得点でコースを判定する一方、特進コース志望者がスーパー特進コースの基準に達していればスーパー特進での合格に切り替わります。清風も、出願時の志望に関係なく合格コースを決めたうえで、上位クラスへの指定を別に行います。

出願時に志望コースを選ぶ学校(A型)

A型でもっとも選択肢が細かいのは帝塚山中学校(奈良市)です。男子は3通り、女子は6通りの合計9つの志望パターンから1つを選んで出願します。女子はスーパー選抜クラスを第1志望、英数クラスを第2志望、女子特進コースを第3志望とする3段構えまで選べます。

学校 募集コース・クラス 志望の書き方 第1志望に届かなかったとき
帝塚山(奈良) 男子英数(スーパー理系選抜1学級・英数2学級)/女子英数(スーパー選抜2学級・英数2学級)/女子特進2学級 計300名(帝塚山小学校からの内部進学者を含む) 男子3通り・女子6通りの計9パターンから選択。専願の場合は男子は第2志望まで、女子は第3志望まで書くパターンに限られる 書いた第2志望・第3志望のコース・クラスで判定
大阪桐蔭(大阪) プロシード(PR)35名/英数選抜(ES)105名/英数(E)70名 計210名 (1)PR→ES→E (2)ES→E (3)Eのみ の3通り (1)(2)で出願した場合、第1志望の合格基準点に達していないときは第2志望・第3志望の合否判定を行う
近畿大学附属(大阪) 医薬約40名/英数アドバンスト約80名/英数プログレス約120名(外部募集約240名) A(医薬/アドバンスト/プログレス)、B(アドバンスト/プログレス)、C(プログレスのみ)の3パターン 要項に「回し合格の制度があります」と明記。Aで出願すれば3コース分の判定を受けられる
桃山学院(大阪) 6年選抜70名/6年進学70名(A方式各45名・B方式各20名・C方式各5名) 志望コースを選んで出願。出願後の志望コース・受験教科数の変更はできない 6年選抜を第1志望とした場合、選抜の合格最低点に達しなくても進学の合格最低点に達していれば6年進学での合格(転コース合格制度)
淑徳与野(埼玉) 医科学進学/特別進学(第1回は医科学15名・特別進学95名ほか) 志望するコースを選んで出願(問題は両コース共通) 「医科学進学コースに出願した場合、特別進学コースでの合格となる場合があります」と要項に明記

桃山学院中学校は、複数方式を受験して両方のコースに合格した場合は6年選抜コースでの合格とする扱いも明示しています。親または兄弟姉妹が同校の卒業生・在学生の場合、A・B・Cすべての方式を受験したときに限り合否判定で若干考慮する制度もあります。

大阪桐蔭中学校は、出願したコースを入試当日に変更できる点が特徴です。「変更届」を当日の指定時間(前期入試・後期L入試・L特別入試は15時、後期S入試は9時、S特別入試は16時)までに提出すれば、併願から専願への変更、出願コースの変更、受験型の変更ができます。専願受験は併願受験より合格最低点を低く設定するとも明記されています。

淑徳与野中学校は2027年度からコース名が変わります。「医進コース」が「医科学進学コース」、「特進コース」が「特別進学コース」になります。入試日程は医科学進学コース特別入試が1月10日(14時集合・算数と理科の各50分100点で200点満点)、第1回が1月13日(8時40分集合・4科300点満点)、第2回が2月4日。出願は12月1日9時から1月7日18時まで(第2回は1月14日14時から2月3日22時まで)、受験料は各回25,000円で2回目以降は10,000円です。入学後も本人の希望と成績を考慮したコース変更が可能とされています。

出願時にコースを選ばない学校(B型)

B型の学校では、志望コースを申告する欄がそもそもありません。全員が同じ試験を受け、合計点の順にコースが決まります。「上位コースを書いたら落ちるかもしれない」という悩み自体が発生しない設計です。

学校 コースと募集人員 要項の記載 主な日程
開明(大阪) スーパー理数120名/理数120名(4回入試で計240名) 「出願時のコース選択はありません」「合格コースは合計点順にスーパー理数コース合格、理数コース合格となります」 前期1月16日、中期A・B 1月17日、後期1月19日。Web出願12月2日〜1月13日(後期のみ1月18日も受付)
清風(大阪・男子) 理III・理II・理Iの6か年コース計360名(前期210名・後期チャレンジ150名) 「出願時の志望コースに関わらず、入試の得点によって合格コース(理III・理II・理I)を判定します」 前期・前期プレミアム理III選抜1月16日、後期チャレンジ・プレミアム最終選抜1月18日。検定料20,000円
清風南海(大阪) 約270名(A入試スーパー特進約90名・特進約130名/B入試スーパー特進約20名・特進約30名) 「入試成績により、スーパー特進コース・特進コースの合否判定を行います」 A入試1月17日・B入試1月19日(いずれも開門7時、8時着席、8時30分開始)。出願12月1日10時〜1月13日23時59分
二松学舎大学附属柏(千葉) 第一志望入試でグローバル探究5名・総合探究25名、第1回35名、第2回20名 「全コースを同一試験で判定します」「入試の結果よりグローバル探究コース希望者は総合探究コースの合格になる(場合があります)」 第一志望入試12月1日、第1回1月20日、第2回1月21日(いずれも8時45分集合)

開明中学校は前期日程だけ専願・併願の区別があり、専願受験生は併願受験生より理数コースの合格最低点を低く設定すると明記しています。前期の専願受験生は中期A・B、後期でも専願受験生として判定され、前期併願・中期A・中期Bのいずれかを受験していれば後期当日の集合時間までに「専願届」を出して専願扱いにできます。検定料は20,000円で、後期日程を欠席した場合は理由を問わず返金されます。

清風中学校は、複数回受験した場合に2回目以降の得点に10点を加算して合否・合格コースを判定します(W受験者特典)。面接は保護者同伴の全体面接で、W受験者は2回目以降の面接が免除されます。3教科型は合計点を1.25倍して400点満点、4教科型は「国算理」「国算社」(いずれも1.25倍)と4教科合計の3つを比べて最も高い点数で判定する方式です。

二松学舎大学附属柏中学校は、12月1日の第一志望入試を受験した人は1月の入試を10,000円で受験できるとしています。1月の入試は特待生選抜を兼ねており、A奨学生10名程度・B奨学生25名程度の枠があります。第一志望入試は志望理由書・自己アピール申請書の提出(簡易書留で郵送)が必要です。

上位コース・特待クラスへ「上がる」仕組み(C型)

見落とされやすいのが、下位コースを志望して出願した受験生が上位コースでの合格に切り替わるケースです。清風南海中学校の要項には2つの方向が並べて書かれています。

学校 上がる仕組み 要項の記載
清風南海 特進コース希望者がスーパー特進の基準に達した場合 「スーパー特進コースに合格となります。ただし、この場合、受験生本人が入学時のコースを選択することができます」。下方向は「スーパー特進コースが不合格の場合でも、特進コースへの回し合格があります」
清風 理IIIプレミアムクラスへの指定 プレミアム最終選抜試験で「理IIIプレミアムコースの合格基準に達していない場合でも理IIIコースの合格基準に達している場合は、理IIIコースへの合格とします」。前期・後期チャレンジの理III合格者のうち成績優秀者は、手続完了後のクラス編成時に理IIIプレミアムクラスへの指定となる場合がある
開智未来(埼玉) 再受験生への「振り返り判定」 1月14日の第2回入試は「第2回入試の判定に加え、再受験生には振り返り判定を行います。合格および特待や上位クラスへのスライド合格のチャンスが広がる入試になります」
開智(埼玉) 特待合格者のコース選択 「特待合格者は特待コースを選択することができます」。複数回受験で2回以上受験した場合は、受験したすべての試験の得点に10点を加点して判定

開智未来中学校の募集定員は120名で、内訳はT未来クラス60名・未来クラス30名・開智クラス30名です。受験料20,000円で開智学園6校(開智未来・開智・開智日本橋・開智望・開智所沢・開智横浜国際〈仮称〉)のすべてを受験できる仕組みがあり、1月15日の「開智併願」は開智中学校の特待II入試、2月4日の「日本橋併願」は開智日本橋の第4回入試を受けながら、出願時に「開智未来の判定を希望する」にチェックすることで開智未来の判定も受けられます。1月10日の第1回または1月11日の算数1科を受けた人が1月12日のT未来入試を受けると10点の加点優遇があります。

清風南海中学校には、A入試でスーパー特進コースに合格した場合はB入試を受験できないという規定もあります。A入試とB入試の両方に出願してA入試でスーパー特進に合格し入学した場合に限り、入学後にB入試の受験料が返金されます。A入試でスーパー特進の基準点に達しなかった人がB入試を受ける場合は、B入試成績に10点を加えて判定します。コース間は入学後も固定ではなく、学業成績等により年度末(3月)に入替を実施するとされています。

募集する回ごとにコースが違う学校・1コースに一本化した学校

コース制の学校では、すべての回で全コースを募集するとは限りません。埼玉栄中学校の2027年度入試は、午前の回と午後の回で募集コースが変わります。

回 試験日 募集定員 募集コース 試験教科
第1回 1月10日 午前 50名 医学・難関大・進学 国算社理
第2回 1月10日 午後 10名 医学・難関大 国算
第3回 1月11日 午前 30名 医学・難関大・進学 国算社理
第4回 1月11日 午後 10名 医学・難関大 国算
第5回 1月13日 午前 20名 医学・難関大・進学 国算社理

午後入試にあたる第2回・第4回は進学コースの募集がありません。進学コースを志望するなら受験できる回が1月10日午前・11日午前・13日午前の3回に絞られます。

逆に、コース制をやめて募集を一本化した学校もあります。麗澤中学校(千葉)の2027年度一般入試の募集コースは「AE+(エーイープラス)コース」の1コースです。第1回が1月21日(70名)、第2回が1月25日(50名)、第3回が1月28日の午後入試(30名)で、本校会場と船橋会場(ホテルフローラ船橋)を置きます。コースが1つであれば、回し合格やスライド合格を考える必要はなくなります。

保護者・受験生への影響と対策

第一に、出願前に「志望コース欄があるか」を確認することです。欄がないB型なら、迷う余地はありません。欄があるA型なら、第2志望を書けるかどうかで「挑戦のコスト」が変わります。帝塚山や大阪桐蔭のように第2志望・第3志望まで書けるなら、上位コースを第1志望にしても下位コースでの合格機会は残ります。

第二に、専願・併願の選択が合格最低点に影響する学校があることです。開明は専願受験生の理数コース合格最低点を低く設定し、大阪桐蔭も専願は併願より合格最低点を低く設定すると明記しています。帝塚山では専願で出願できる志望パターンが男子は第2志望まで書く(2)、女子は第3志望まで書く(6)に限定されます。専願は「合格したら必ず入学する」という約束と引き換えの優遇だと理解しておく必要があります。

第三に、合格したコースが入学後に固定されるわけではない点です。清風南海は年度末(3月)にコース間の入替を実施し、淑徳与野は入学後に本人の希望と成績を考慮したコース変更が可能とされています。帝塚山の要項には、コース・クラスごとの入学予定者数が学級運営に影響すると判断した場合、入学前に適正人数にするためコース・クラスの変更を行うことがあるとも書かれています。第1志望のコースに届かなかったことが6年間を決めるわけではありません。

第四に、変更できる期限を押さえることです。大阪桐蔭は入試当日の指定時間まで出願コースを変更できますが、桃山学院は出願後の志望コース・受験教科数の変更ができません。同じA型でも運用は逆向きです。

今後のスケジュール

時期 内容
11月1日 二松学舎大学附属柏の第一志望入試の出願開始(11月25日15時まで)
12月1日 淑徳与野(第1回・特別入試)、清風南海、大阪桐蔭(前期・後期S・後期L)の出願開始。二松学舎大学附属柏の第一志望入試
12月2日 開明のWeb出願開始(1月13日まで)
12月7日・8日 清風(12月7日9時〜)、帝塚山(12月8日9時〜1月8日23時59分)の出願開始
12月14日 近畿大学附属の出願開始(前期は1月14日正午まで)
1月10日〜13日 埼玉入試(淑徳与野1月10日・13日、埼玉栄1月10日〜13日、開智未来1月10日〜14日)
1月16日〜19日 関西の統一入試日程(清風・開明・大阪桐蔭・桃山学院・帝塚山・近畿大学附属が1月16日、清風南海は1月17日)
1月20日・21日 二松学舎大学附属柏の第1回・第2回、麗澤の第1回(1月21日)
2月4日 淑徳与野の第2回入試

よくある質問

上位コースを第1志望にすると不利になりますか

学校の設計によります。第2志望を書けるA型の学校(大阪桐蔭、帝塚山、近畿大学附属、桃山学院)や、下位コースへの回し合格を明記している学校(清風南海、淑徳与野、二松学舎大学附属柏)では、上位コースを第1志望にしても下位コースでの合格判定を受けられます。一方、第2志望を書く欄がなく回し合格の記載もない学校では、その回でそのコースの基準に届かなければ不合格になります。要項の「合否判定」「出願コースについて」の項目を読み、記載がなければ学校に直接確認してください。

「回し合格」と「スライド合格」は違う制度ですか

いずれも一般名称で、法令や統一規則で定義された用語ではありません。関西の学校は「回し合格」(近畿大学附属、清風南海)、「転コース合格制度」(桃山学院)と書き、首都圏では「スライド合格」(開智未来)という語が使われます。呼び名が違っても、第1志望のコースに届かなかった受験生を下位コースで判定する点は同じです。ただし上位コースへ上がる場合も「スライド」と呼ばれることがあるため、方向を確かめてください。

コースが1つしかない学校を選んだほうが安心でしょうか

コース数は学校の教育設計の問題で、合格しやすさとは別の話です。麗澤は2027年度の一般入試をAE+コースの1コース募集としており、コース判定という変数はなくなります。一方で、コース制の学校は上位コースに特待・奨学金が結び付いている場合があります(清風の理IIIプレミアムクラス、開智の特待コース、二松学舎大学附属柏のA・B奨学生、大阪桐蔭の特別奨学生制度)。コース数の多寡ではなく、志望校の判定ルールと費用面の条件を合わせて見るのが実際的です。

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出典

最終更新: 2026年10月16日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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合格之助(中村先生)
合格之助(中村先生)

中学受験専門塾で長年、受験生と保護者の進路相談を担当している中村です。偏差値・倍率・過去問傾向・学校ごとの出題特徴をもとに、志望校選びをわかりやすくサポートしています。

特に得意なのは、単に偏差値だけで学校を判断するのではなく、
「倍率」「受験者数の推移」「合格可能性」「併願パターン」まで含めて、一人ひとりに合った本当に狙いやすい学校を見つけることです。