中学入試の受験料は、1回あたり2万円から3万円が相場である。3回、4回と出願を重ねれば、それだけで10万円近くになる。加えて合格後には入学金と施設費の納入が待っている。この「入試に払うお金」のうち、条件を満たせば戻ってくるお金があることは、募集要項の脚注に小さく書かれているだけで、説明会でも大きく扱われないことが多い。

戻ってくるお金には、性質のまったく違う3種類がある。ひとつは合格して入学したために受けずに済んだ回の検定料。ふたつめは入学を辞退したときに返る納入金の一部。みっつめはきょうだいや卒業生であること、特待生に選ばれたことによって免除・返金されるお金である。いずれも学校によって有無が分かれ、同じ制度名でも対象から外れる条件が細かく決められている。

本記事では、2027年度(令和9年度)の募集要項と各校公式のよくある質問から、首都圏の私立中学14校の返金・免除規定を整理した。返金がある学校だけでなく、「早い回で合格しても後の回の検定料は返さない」と明記している学校も並べている。出願の組み方を決める前に、自分の受ける学校がどちらなのかを確かめてほしい。

受けずに済んだ回の検定料が戻る学校

複数回受験を前提に出願しておき、早い回で合格したら残りは受けない。この「受けなかった回」の検定料を返す学校がある。ただしいずれも「その学校に入学した人」に限られるのが共通点で、他校へ進む場合は戻らない。

学校 検定料 返金される条件 対象から外れる場合
本郷中学校 各回25,000円 複数回出願し本校に入学した場合、それ以降の未受験分を返金。入学手続後のアンケートに回答することが必要 入学しない場合。申込後の受験回の変更も不可
共立女子中学高等学校 1回25,000円
2回同時40,000円
3回同時50,000円
複数回同時出願者が2月1日・2月2日入試に合格して手続きした場合、以後受験しなかった回の検定料分を返金 同時出願ではなく後から追加出願した回(公式Q&Aは同時出願者と明記)
富士見中学校 各回23,000円
同日の英語資格利用入試と同時出願で30,000円
一般入試の複数回出願者が合格・入学手続をした場合、事後受験しなかった一般入試の検定料各回23,000円を返金。英語資格利用入試と同時出願なら各回10,000円 繰り上げ合格者・英語資格利用入試・算数1教科入試・入学辞退者
鎌倉学園中学校 公式Q&Aに金額の記載なし 算数選抜と一次(二次)入試の双方に合格し入学が決定した場合、一次(二次)入試の受験料を返金 入学が決定しない場合

細かさでは富士見が際立つ。返金の対象を「入学者に限る」としたうえで、繰り上げ合格で入学した人、英語資格利用入試や算数1教科入試で入学した人、そして入学手続後に辞退した人を、いずれも明確に対象外としている。2月1日の一般入試で合格して手続きし、2月2日以降の一般入試を受けなかったという最も素直なパターンが、制度の本来の想定である。

本郷は返金の窓口が入試部門ではない点に注意したい。募集要項の入学手続の項に「入学手続後のアンケートにお答えください」とあり、アンケートへの回答が返金手続きを兼ねている。手続きを終えて安心していると、返ってくるはずのお金が動かないままになる。

共立女子は2027年度の入試を海外帰国生(11月29日)と2月1日・2月2日・2月3日午後の3回で実施する。返金の対象になるのは複数回を同時に出願した受験生で、1回だけ出願して合格し、その後に別の回を追加出願した場合は前提が変わる。公式のよくある質問に記載された制度のため、出願前に2027年度の生徒募集要項で条件を確認しておきたい。

「早い回で合格しても返さない」と明記する学校

返金制度は当たり前ではない。むしろ募集要項に「返金しない」とはっきり書く学校のほうが多い。同じ首都圏で、同じように複数回入試を行いながら、扱いは正反対である。

学校 検定料 公式の記述
森村学園中等部 1回25,000円
2回同時30,000円
3回同時35,000円
「一旦納入された検定料は、いかなる理由でも返金いたしません」「複数回に出願し、早い回で合格した場合でも、後の回の検定料の返金はいたしません」
日本大学第二中学校 30,000円
第1回・第2回同時出願で40,000円
「入学検定料支払い後の受験日の変更、受験の取り消し・返金はできません」。さらに第1回・第2回を同時出願して第1回で合格した場合、第2回は受験できない
恵泉女学園中学校 1回25,000円
1月30日23:59までの同時出願で2回40,000円・3回50,000円
「一旦納入された入学検定料は、理由の如何を問わずお返しできません」。1月31日0:00以降の出願は同時出願でも1回25,000円
攻玉社中学校 2027年度募集要項に記載 「既納の受験料はお返しできません」
大妻中野中学校 2027年度募集要項に記載 「一旦受理した入学検定料・入学金・書類等は返還いたしません」

森村学園の書きぶりは、返金の有無を判断するうえでもっとも分かりやすい。「いかなる理由でも返金しない」と書いたあとに、想定される唯一の例外である「早い回で合格した場合」をわざわざ挙げて否定している。同時出願の割引(2回30,000円・3回35,000円)が、返金に代わる負担軽減策として設計されていると読める。

日本大学第二は構造がさらに違う。第1回と第2回を同時出願して第1回で合格した場合、第2回は受験そのものができないと要項に明記されている。それでいて検定料の返金はない。同時出願の40,000円(単独なら各回30,000円)は、2回受ける権利の代金ではなく2回分の出願枠の代金という位置づけになる。

恵泉女学園の同時出願割引には締切がある。1月30日23:59までに複数回を同時出願すれば2回40,000円・3回50,000円だが、1月31日0:00を過ぎると同時出願であっても1回あたり25,000円に戻る。2月1日の結果を見てから追加出願すると割引は効かず、返金もない。

入学辞退で戻るのは入学金ではなく施設費

もうひとつの返金は、入学手続を済ませたあとに辞退した場合の話である。ここでの原則は明快で、入学金は戻らず、施設費(施設設備資金・施設設備費)は期限内なら戻る。公立中高一貫校の結果待ちや、後日の他校受験を控える家庭に直接関わる。

学校 入学手続時の納入金 辞退で返るお金 期限
香蘭女学校中等科 入学金300,000円+施設設備資金の一部100,000円 施設設備資金の一部100,000円(入学金は返金なし) 2027年2月6日(土)15:00までに辞退手続
日本大学第二中学校 入学金250,000円+施設設備費(入学時分)100,000円 施設設備費(入学時分)100,000円。施設設備費以外の納入金は返還されない 要項に「入学手続き後、入学を辞退される方には返還します」と記載
鎌倉学園中学校 公式Q&Aに入学金・施設費の区分を記載 入学金の一部100,000円と施設費納入分150,000円 入学金の一部は2月の保護者説明会前日まで、施設費は入学式前日まで
恵泉女学園中学校 入学金300,000円 なし(「一旦納入された入学金は、理由の如何を問わずお返しできません」) —
成城中学校 入学金300,000円 なし(「一旦納入された入学金は、理由の如何を問わず返金できません」) —
跡見学園中学校 2027年度募集要項に記載 なし(「一旦納入された入学金は理由の如何にかかわらずお返ししません」) —
富士見中学校 2027年度募集要項に記載 なし(「一旦、納入された入学金は返還できません」) —

鎌倉学園の設計はこの中でもっとも戻る額が大きい。入学金の一部100,000円は2月の保護者説明会前日まで、施設費納入分150,000円は入学式前日までと、返金期限が2段階に分かれている。施設費の期限が3月末近くまで残るため、辞退の判断を遅らせる余地がある。

香蘭女学校は期限が明確に日付で示されている。入学金等の払込期限は日程ごとに2月2日18:00または2月3日19:00で、その後2027年2月6日(土)15:00までに辞退手続を行えば施設設備資金の一部100,000円が戻る。辞退の判断に使える猶予は合格発表後の数日に限られるため、併願校の発表日と手続き期限を先に書き出しておきたい。

一方で、恵泉女学園・成城・跡見学園・富士見はいずれも入学金の返還を明確に否定している。入学金は「席を確保する代金」であり、戻らないことが原則と考え、手続きの締切そのものを併願戦略の判断点に置くほうが安全である。

きょうだい・卒業生・特待生で戻るお金

3つめは、受験の結果ではなく家族の関係や合格の種類によって戻るお金である。金額が大きく、しかも申請が必要なものが多い。

学校 対象 扱い 手続き
浦和実業学園中学校 受験生の兄・姉が同校中学校の在校生または卒業生 入学金23万円が免除 出願時のアンケートで兄・姉の氏名、在籍学年または卒業、最終学年のクラス担任名を回答
浦和実業学園中学校 受験生の父母が浦和実業学園高等学校の卒業生 入学金のうち13万円を5月に返金 出願時のアンケートで申告し、3月の入学予定者説明会で「申請書」に卒業年・最終担任名を記入
十文字中学校 入学手続後に特待生として合格した場合 すでに納付された入学金等を返金(受験のみでは延納されない) 公式Q&Aに記載。年度の明記がないため2027年度要項での確認が必要

浦和実業学園は同じ「卒業生の縁」でも扱いが分かれている点が特徴的である。兄・姉が中学校の在校生・卒業生なら入学金23万円が最初から免除、父母が高校の卒業生なら一度納めたうえで13万円が5月に返金される。後者は特待A・特待Bの合格者には入学金そのものがないため適用されない。なお同校は、合否判定において関係者への優遇は一切ないと明記している。

十文字の制度は、特待生を狙って複数回受験する家庭に関わる。早い回で一般合格して手続きを済ませ、後の回で特待生合格となった場合、すでに納めた入学金等が返金される。ただし「受験のみでは延納されない」とも書かれており、特待生を狙うこと自体が手続き期限の猶予にはならない。

保護者が出願前に確かめる3点

返金制度は金額の大小より、出願の組み方を左右するところに意味がある。確認すべきことは3つに絞られる。

1. 「同時出願」が条件になっていないか。 共立女子の検定料返金は複数回同時出願者を対象としており、恵泉女学園の同時出願割引は1月30日23:59が締切である。2月1日の結果を見てから追加出願するという進め方は、返金も割引も受けられない可能性が高い。受ける可能性のある回は、出願時点でまとめて出しておくほうが金銭的には有利になる。

2. 「入学者に限る」という条件に自分が当てはまるか。 検定料の返金はすべて入学者向けの制度である。第2志望として複数回出願し、結果的に他校へ進む場合、戻るお金はない。富士見はさらに繰り上げ合格者と算数1教科入試・英語資格利用入試での入学者を対象外としているため、同じ学校に入学しても返金されないルートが存在する。

3. 辞退の期限が併願校の発表日より後にあるか。 香蘭女学校は2月6日15:00、鎌倉学園は施設費が入学式前日までと、期限の幅に大きな差がある。入学金は原則として戻らないため、手続きを行うかどうかの判断そのものを、併願校の発表日・手続き期限と並べて決めておく必要がある。

そして共通する実務がひとつある。返金は自動ではない場合がある。本郷は入学手続後のアンケート、浦和実業学園は出願時のアンケートと3月の申請書、十文字は特待生合格後の手続きが起点になる。返金があると知らなければ、申請しないまま終わってしまう。

今後のスケジュール

時期 確認すること
2026年10月 東京・神奈川の私立中学が2027年度募集要項の詳細版を公開する時期。検定料の金額と返金規定は要項の脚注に置かれることが多い
2026年11月〜12月 帰国生入試の実施。森村学園は12月1日〜12月11日出願、共立女子の海外帰国生入試は11月29日
2026年12月20日 日本大学第二の出願情報入力開始(0:00)。本郷も12月20日9:00から入力・検定料決済が可能
2027年1月10日 首都圏の多くの学校で出願受付開始。香蘭女学校は1月10日8:00、恵泉女学園は1月10日9:00から
2027年1月30日 恵泉女学園の同時出願割引の締切(23:59)。森村学園の第1回出願締切も1月30日
2027年2月1日〜 入試本番。本郷は2月1日・2日・5日、日本大学第二は2月1日・3日、共立女子は2月1日・2日・3日午後
2027年2月6日 香蘭女学校の入学辞退手続の期限(15:00)。富士見の繰り上げ合格の連絡開始は2月6日15:00から2月13日まで
2027年3月〜5月 浦和実業学園の入学予定者説明会(3月)で申請書を提出、入学金のうち13万円は5月に返金

よくある質問

他校に進む場合、受けなかった回の検定料は戻りますか

戻りません。本記事で確認した4校(本郷・共立女子・富士見・鎌倉学園)の検定料返金は、いずれもその学校に入学した受験生を対象とする制度です。富士見は「入学者に限り、返金いたします」と明記し、入学辞退者を対象外としています。複数回出願の費用は、第1志望校であれば一部が戻る可能性がある、第2志望以下では戻らないものと考えて予算を組むのが安全です。

入学金を納めた後に辞退したら、いくら戻りますか

学校によって大きく異なります。入学金そのものが戻る学校は本記事の14校では確認できず、恵泉女学園・成城・跡見学園・富士見はいずれも入学金の返還を明確に否定しています。戻るのは施設費にあたる部分で、香蘭女学校は施設設備資金の一部100,000円(2027年2月6日15:00までの辞退手続)、日本大学第二は施設設備費(入学時分)100,000円、鎌倉学園は入学金の一部100,000円と施設費納入分150,000円です。返金額と期限は必ず各校の2027年度募集要項で確認してください。

複数回の同時出願は結局お得なのでしょうか

金額だけを見れば、多くの学校で同時出願のほうが安くなります。共立女子は1回25,000円に対し3回同時50,000円、森村学園は1回25,000円に対し3回同時35,000円、恵泉女学園は1回25,000円に対し3回同時50,000円です。加えて共立女子と富士見は、同時出願した回を受けずに済んだ場合の返金制度を持っています。一方で日本大学第二のように、同時出願して第1回で合格すると第2回は受験できず、検定料も返らない学校もあります。割引の額、返金の有無、受験できる回の制限を3点セットで確認することをおすすめします。

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出典

最終更新: 2026年9月25日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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合格之助(中村先生)

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