私立中学の学費を調べると、どの学校も「初年度納付金」という数字を出している。入学金・授業料・施設費・教育充実費などを合計した金額で、一都三県の平均は100万円前後である。ところがこの数字には、制服も、指定の体育着も、学習用のタブレットも、副教材費の積立金も入っていない。入学手続を終えた家庭が2月から3月にかけて実際に支払う金額は、公表されている納付金よりはっきり大きい。

金額の差は小さくない。東京電機大学中学校が公開している2026年度実績では、中学1年の「学費関係小計」が1,126,550円であるのに対し、制服・学習用タブレット・教科書代まで含めた中学1年の総額は男子1,476,791円・女子1,478,771円と記載されている。差は約35万円で、学費表だけを見て予算を立てた家庭は、この35万円を見落とすことになる。

この記事では、首都圏の私立中学18校が学費ページ・募集要項・入試Q&Aで公開している「納付金に含まれない費用」の実額を、制服と指定用品/学習用端末/積立金・教材費/宿泊行事費の4つに分けて整理した。金額はいずれも各校が自校サイトに掲載しているもので、掲載年度が明示されている場合はそれも併記している。

制服・指定用品は5万円台から17万円台まで

まず入学時にまとめて買うものである。制服・体育着・通学かばん・上履きなどをいくらで公開しているか、校種・性別の別も含めて一覧にした。学校によって「必須品だけを1着ずつ買った場合」の合計を出すところと、品目ごとの単価だけを並べるところがある。

学校名 所在 公開されている制服・指定用品の金額 掲載年度
和洋九段女子中学校 東京 入学時物品購入費 70,843円(「必ず購入するもの」のみの合計。ブレザー24,860円、通学用リュック13,500円、体育館シューズ4,708円などの単価も公開) 2026年度実績
日本大学第二中学校 東京 必須購入品を1着ずつ購入した場合、制服 男子68,860円・女子69,135円、通学カバン12,700円、体育着・上履き等 男子36,070円・女子37,610円 2026年度
東京電機大学中学校 東京 制服等小計 男子110,550円・女子112,530円(ネクタイ〈レギュラー〉と通学鞄①を選んだ場合。体操着26,312円を含む) 2026年度実績
山脇学園中学校 東京 第一制服(ワンピース)44,330円、第二制服(ブレザー)28,050円、冬スカート18,150円、通学バッグ12,540円、体育着 半袖Tシャツ3,500円ほか 2026年度
本郷中学校 東京 制服上下 37,950円(東武百貨店)/38,060円(西武百貨店)、ジャージ上下7,500円、上履き兼体育館シューズ4,500円、ナップサック1,500円ほか 記載なし
三輪田学園中学校 東京 制服 約58,000円、盛夏用略服 約25,000円、学用品 約50,000円(ほかに希望品としてセーター・コート・革靴等 約51,000円) 記載なし
トキワ松学園中学校 東京 制服・体育着など 114,920円 記載なし
清泉女学院中学校 神奈川 制服およびその他学用品 およそ110,000円(盛夏服各21,890円、カーディガン8,360円、コート約25,000円などは任意購入) 2027年度入試要項ページ
東海大学付属相模高等学校中等部 神奈川 制服等(組み合わせによる) 9万〜13万円 入試FAQ
麗澤中学校 千葉 制服(体操服等を含む) 約99,000円 2027年度入学生(予定)
武南中学校 埼玉 制服・用品代 男子 約165,000円・女子 約173,000円 2026年度実績

最も安い部類が三輪田学園中学校の制服約58,000円、最も高い部類が武南中学校の制服・用品代 女子約173,000円で、3倍近い開きがある。ただしこれは学校の高い・安いを比べる数字ではない。どこまでを「制服代」に含めて公開しているかが学校ごとに違うからである。武南中学校は「制服・用品代」として体育着やかばんまで一括した概算を出しており、三輪田学園中学校は制服・盛夏用略服・学用品・希望品を分けて書いている。三輪田学園中学校の必須分を単純に足すと約108,000円になり、トキワ松学園中学校の114,920円や清泉女学院中学校の約110,000円と近い水準になる。

読み取るべきなのは、首都圏の私立中学では制服と指定用品一式でおおむね10万円台が目安になるということと、和洋九段女子中学校・本郷中学校・山脇学園中学校・東京電機大学中学校のように品目別の単価まで出している学校なら、任意購入品を省いた最小構成がいくらになるか事前に計算できるということである。和洋九段女子中学校は品目ごとに「◎:必ず購入」「〇:どちらかを選択して購入」「△:希望により購入」の記号を付けており、70,843円が◎の分だけの合計だと明記している。

学習用端末は5万円から22万円まで、負担のかたちが4通りに分かれる

次がタブレット・ノートPCである。1人1台の端末は私立中学でほぼ標準になったが、費用の負わせ方が学校によってまったく違う。大きく、入学時に本体を買い取る方式、年額のレンタル料を払う方式、納付金や学年費の中に組み込んでしまう方式、分割で学年費に乗せる方式の4通りがある。

学校名 所在 端末費用の扱い 金額
東京電機大学中学校 東京 中1で本体を購入(別途タブレットソフト利用料 年6,800円) 219,395円
トキワ松学園中学校 東京 入学時にタブレットPCを購入(別途ICT維持管理費 2,000円) 120,000円程度〜
桜美林中学校 東京 学年諸経費(副教材費・実力試験等を含む)にタブレット本体の3年分割1年分と保守管理費を内包 学年諸経費 約130,000円
麗澤中学校 千葉 ノートPCを全員購入(保険込) 約100,000円
三輪田学園中学校 東京 iPadを購入(保険等含み) 約95,000円
本郷中学校 東京 入学手続時にChromebook代を納入(施設負担金200,000円・父母の会入会金2,000円と合わせて268,000円) 66,000円
武南中学校 埼玉 タブレットをレンタル(年額) 51,036円
日本大学第二中学校 東京 生徒用情報端末費として納入金に内包。2年次以降は情報ソフト費(2025年度実績 2年20,530円・3年18,230円) 中1 14,900円
東京家政大学附属女子中学校 東京 行事・副教材費にタブレット端末利用料を内包 行事・副教材費 年230,400円

買い取りの東京電機大学中学校219,395円と、レンタルの武南中学校 年51,036円を並べると差が大きく見えるが、レンタルは3年間払い続けるので単純比較はできない。むしろ注意したいのは「端末代が書かれていない学校は、端末代がかからないのではなく、ほかの費目に紛れている」という点である。東京家政大学附属女子中学校は行事・副教材費230,400円にタブレット端末利用料を含むと注記し、桜美林中学校は学年諸経費約130,000円の内訳に「タブレット本体:3年分割(1年間分)、保守管理費他」と書いている。費目名だけを眺めていると見落とす。

積立金・教材費は年6万円から年32万円

入学後に毎月または年2回引き落とされるのが、副教材費・校外学習費・行事費の積立金である。納付金一覧には載らないが、3年間払い続けるため総額では制服代より大きくなる学校が多い。

学校名 所在 費目 金額
富士見中学校 東京 生徒積立金(副教材購入・校外学習等に充当) 年額 324,000円(2026年度 第1学年実績)
和洋九段女子中学校 東京 諸費積立金(教材・旅行・鑑賞会等) 中1 300,000円・中2 300,000円・中3 90,000円(3年計690,000円)
跡見学園中学校 東京 生徒預り金(教材費等) 中1 200,000円・中2 110,000円・中3 110,000円(ほかに学年行事費・校友会費)
山脇学園中学校 東京 教材費 中1 153,000円・中2 103,000円・中3 106,000円(2025年度)
日本大学豊山中学校 東京 補助教材費(4月納入) 142,000円(2025年度 第1学年)
東京家政大学附属女子中学校 東京 行事・副教材費(年額) 230,400円(2026年度)
三輪田学園中学校 東京 積立金(副教材費・生徒会費等) 年額 約150,000円
本郷中学校 東京 クラス運営費(預り金・副教材の購入等) 年額 80,000円
東京電機大学中学校 東京 学年教材費+教科書・副教材費 中1 40,000円+20,296円
桜美林中学校 東京 学年諸経費 約130,000円
清泉女学院中学校 神奈川 積立金(副教材費等) 月額 10,000円
湘南学園中学校 神奈川 学年費(副教材費等) 年額 60,000円
麗澤中学校 千葉 教材費等(1年次見込み) 約70,000円
武南中学校 埼玉 教材費等 約120,000円
浦和実業学園中学校 埼玉 積立金(月額) 23,000円(2024年度実績)

最も高いのが富士見中学校の年額324,000円だが、同校は「残金は次年度に繰り越し、卒業時に返還します」と募集要項に明記している。積立金は授業料と違って使い切りではなく、預り金として扱われ、使われなかった分が戻る学校がある。和洋九段女子中学校も「諸費積立金は教材・旅行・鑑賞会等で生徒が直接使用する費用となり、年度末に決算報告いたします」と書いている。積立金の高い・安いだけを見るのではなく、精算して返るのか、使い切りなのかを確認しておきたい。

跡見学園中学校・山脇学園中学校・東京電機大学中学校のように学年ごとの金額を出している学校を見ると、中学1年の積立金・教材費がいちばん高く、2年次以降は下がる傾向が共通している。跡見学園中学校は中1の教材費等が200,000円で中2・中3は110,000円、山脇学園中学校は中1が153,000円で中2が103,000円である。入学年度にまとめて教材をそろえるためで、初年度の負担が重く見えるのはこの構造による。

宿泊行事費は別立て、海外研修がある学校では40万円

修学旅行や林間学校の費用も、積立金とは別に案内している学校が多い。

学校名 宿泊行事とその費用
桜美林中学校 宿泊研修(中1・4月)約20,000円/林間学校(中1・7月)約42,000円/サマースクール(中2・7月)約45,000円/海外研修旅行(中3・12月、7泊8日・オーストラリア)約400,000円
山脇学園中学校 オリエンテーション研修(中1)53,000円/夏季学校(中2)60,000円/関西修学旅行(中3・リベラルアーツチャレンジプログラム)140,000円
本郷中学校 オリエンテーション(中1)約50,000円/林間学校(中2)約55,000円/修学旅行(中3)約90,000円(2回分納)
東海大学付属相模高等学校中等部 錬成旅行費 約40,000円/スキー教室費 約45,000円/修学旅行費 約110,000円
跡見学園中学校 サイエンス探究教室費・SDGs探究旅行費 中1 85,000円・中2 60,000円・中3 10,000円
東京電機大学中学校 校外授業費 中1 60,000円・中2 120,000円
麗澤中学校 研修旅行積立金 月額22,000円(1〜3年次12月)
湘南学園中学校 旅行積立金 月額14,000円(中学)、ハートグローバル積立金(中1)月額2,000円、イングリッシュキャンプ積立金(中2)月額3,000円

桜美林中学校の海外研修旅行 約400,000円が突出している。中学3年の12月にオーストラリアへ7泊8日という行程で、同校はこれを「その他の経費(2025年度実績)」として学費ページに明記している。海外研修を正規の行事として組み込んでいる学校では、3年間の総額が納付金の比較だけでは見えなくなる。湘南学園中学校のように月額の積立に分けている学校は、月々の引き落とし額には表れるが「行事費」という名前では出てこない。

給食を実施する学校では食費も加わる。麗澤中学校は一斉給食で年額148,000円(弁当の持参は不要)、東京家政大学附属女子中学校は給食費 年額102,300円を納入金に計上している。

学費表と実際の差=東京電機大学中学校の例で35万円

ここまでの費目が合わさると、納付金の公表値と実際の支出がどれだけ離れるのか。東京電機大学中学校は学費・制服・端末・教材費をすべて1ページに並べ、合計まで出している数少ない学校なので、そのまま引用する(2026年度実績・一貫生・中学1年)。

区分 金額(男子) 金額(女子)
学費関係小計(入学金・授業料・教育充実費・学年教材費・学習環境整備費・タブレットソフト利用料・校外授業費・PTA会費等) 1,126,550円 1,126,550円
制服等小計 110,550円 112,530円
学習用タブレット 219,395円 219,395円
教科書・副教材費 20,296円 20,296円
中学1年 合計 1,476,791円 1,478,771円

学費関係小計に乗る分が男子350,241円・女子352,221円である。これが「初年度納付金」という言葉から抜け落ちる金額の目安になる。もちろん端末を買い取る学校なので差が大きく出ているが、レンタルや分割の学校でも、制服10万円台+積立金・教材費10万〜30万円という構造は共通している。納付金の公表値に20万〜35万円程度を上乗せして初年度の予算を組むのが現実的である。

保護者・受験生への影響と、出願前にできること

第一に、併願校を比べるときは納付金の一覧表だけで判断しないこと。都県が公表する初年度納付金の調査は「学校に納める金額」に限られており、制服・指定用品・端末・積立金・修学旅行費は対象外である。2校で納付金が同額でも、端末を買い取る学校と納付金に内包する学校では、初年度の実支出が20万円以上違うことがある。

第二に、学校サイトで見るべきページは「募集要項」ではなく「学費」「諸費用」「学費納入について」である。募集要項に書かれているのは入学手続時納入金と授業料までで、制服や積立金は別ページにあることが多い。富士見中学校のように募集要項の注記として積立金の実績額を書いている学校もあるため、両方に目を通したい。入試Q&Aに金額を載せている学校(東海大学付属相模高等学校中等部など)もある。

第三に、任意購入品と必須品を分けて計算すること。和洋九段女子中学校の◎〇△の記号、山脇学園中学校の★(自由購入)、東京電機大学中学校の【任意購入品】欄のように、必須と任意を分けて公開している学校なら、入学時に本当に必要な最小額が出せる。セーター・コート・サブバッグ・長袖Tシャツなどは後から買い足せることが多い。

第四に、積立金は「返る学校」と「使い切りの学校」がある。富士見中学校は卒業時に残金を返還し、和洋九段女子中学校は年度末に決算報告を行う。一方で学年費として毎年精算する学校もある。3年間の総額を見積もるときは、返還の有無で実質負担が変わる。

第五に、兄姉のお下がりや中古制服が使えるかを学校に確認すること。指定品の購入先が百貨店に限定されている学校(本郷中学校は東武百貨店・西武百貨店の2か所で価格が異なる)や、学校指定の販売会でしか買えない学校がある。在校生保護者の間で制服のリユースを行っている学校もあるため、説明会や個別相談で聞いておくと負担を抑えられる。

今後のスケジュール

これらの費用が実際に動き出すのは、合格発表後である。一般的な流れは次のとおりで、金額の確定した案内が届くのは入学手続後になる。

時期 動き
2026年11月〜12月 各校が2027年度の学費ページを更新。前年度実績として掲載している学校は、この時期に改定が反映されることがある
2027年1月〜2月 入試・合格発表。入学金・施設費など入学手続時納入金を納入
2027年2月〜3月 入学手続者向けに制服採寸・指定用品販売の案内が届く。採寸会は2月中旬〜3月上旬に設定されることが多く、この時点で制服代が確定する
2027年2月〜3月 端末の購入・申込手続。買い取り方式の学校では入学前に代金を納入する
2027年4月 授業料・積立金・教材費の口座振替が開始。日本大学豊山中学校の補助教材費142,000円のように4月にまとめて納入する費目がある

注意したいのは、今回挙げた金額の多くが2025年度・2026年度の実績であり、2027年度の確定値ではない点である。麗澤中学校だけが「2027年度入学生(予定)」として公開しているが、同校も「学費、諸会費等の学校納入金や食費は、年度により改定することがあります」と注記している。武南中学校・和洋九段女子中学校・東京電機大学中学校はいずれも「2026年度実績」と明記したうえで変更の可能性に触れている。見積もりとしては十分使えるが、確定値は入学手続後の案内を待つ必要がある。

よくある質問

初年度納付金のほかに、結局いくら用意すればよいですか

今回確認した18校の金額からは、制服・指定用品で10万円台、学習用端末で5万〜22万円、積立金・教材費で年6万〜32万円が目安になる。端末を買い取る学校で宿泊行事が重なる場合、納付金に30万〜40万円を上乗せして見ておくと大きく外れない。実例として東京電機大学中学校は、中学1年の学費関係小計1,126,550円に対し、制服・端末・教科書代を含めた合計を男子1,476,791円・女子1,478,771円と公開している。端末が納付金に内包される学校や、レンタル方式の学校では上乗せ分は小さくなる。

制服代を抑える方法はありますか

必須品と任意購入品を分けて公開している学校なら、入学時は必須品だけをそろえる方法がある。和洋九段女子中学校は「◎:必ず購入」「〇:どちらかを選択して購入」「△:希望により購入」と品目ごとに記号を付け、◎だけの合計を70,843円と明示している。東京電機大学中学校も【任意購入品】としてベスト6,160円・セーター7,150円・ダッフルコート22,000円などを区別している。コートやセーターは入学後の様子を見てから買い足すことができる。なお本郷中学校のように購入先の百貨店によって価格が異なる学校(制服上下 東武37,950円・西武38,060円)もあるため、案内の価格表を確認したい。

積立金は使わなかったら返ってきますか

学校による。富士見中学校は生徒積立金について「残金は次年度に繰り越し、卒業時に返還します」と募集要項に明記している。和洋九段女子中学校は諸費積立金を「教材・旅行・鑑賞会等で生徒が直接使用する費用」とし、年度末に決算報告を行うと書いている。いずれも預り金としての扱いで、学校の収入になる授業料や施設費とは性格が違う。一方で、学年費として毎年使い切る運用の学校もあるため、3年間の総額を見積もる際は各校の学費ページの注記を読み、不明なら個別相談で確認するのが確実である。

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出典

最終更新: 2026年10月22日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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