中学入試の募集要項で最初に書かれているのが「出願資格」である。多くの家庭はここを「2027年3月に小学校を卒業見込みの者」という形式的な一行だと考えて読み飛ばすが、学校によっては通学時間の上限や、保護者と同居していることが条件として書き込まれている。出願資格は満たしていることが前提の項目であり、遠距離からの受験や、転勤・単身赴任で家族が別居している家庭にとっては、受験校選びそのものを左右する。

たとえば女子学院中学校は、2027年度の生徒募集要項で「親元から通学でき、通学に要する時間が通常の交通機関(特別料金を必要としない)を用いて90分以内」と明記し、自転車と自家用車の利用を認めていない。慶應義塾中等部は入試Q&Aで、出願できるのは東京都およびその周辺に保護者が居住、または居住予定の者に限ると説明する。神奈川大学附属中学校は「2027年4月1日時点で通学圏内に居住している者」という書き方で、入学時点の居住地を条件にしている。

この記事では、2027年度(令和9年度)入試の募集要項・入試Q&Aで、出願資格に居住地や通学に関する条件を置いている首都圏の私立13校を、要項の表現のまま整理した。あわせて条件を置かない学校の書き方、都立中学校・中等教育学校の居住要件、別居・転居を予定する家庭が出願前に踏むべき手順をまとめる。

出願資格に居住・通学の条件がある私立13校

まず一覧である。条件の文言は各校の2027年度募集要項(香蘭女学校中等科は入試Q&A)に記載されたもので、日程と募集人員も同じ要項から取った。

学校名 所在 出願資格のうち居住・通学に関する条件 2027年度の試験日・募集人員
女子学院中学校 東京 親元から通学でき、通学時間が通常の交通機関(特別料金を必要としない)で90分以内。自転車・自家用車の利用は不可 2月1日・240名
慶應義塾中等部 東京 東京都およびその周辺に保護者(代理可)が居住、または居住予定の者に限る 出願登録12月21日13時〜1月9日19時
神奈川大学附属中学校 神奈川 2027年4月1日時点で通学圏内に居住している者 2月1日80名・2月2日100名・2月4日20名
跡見学園中学校 東京 日常登校時刻の8時までに登校可能な者。入学後、保護者と同居しそこから通学できる者(学区制の適用なし) 2月1日午前70名・2月2日午前50名
東海大学附属高輪台高等学校中等部 東京 保護者と同居している者。やむを得ず同居できない場合は、通学可能な地域で成年者かつ独立の生計を営み親権者と同等の責任を持つ者との同居が条件 2月1日45名・2月2日25名・2月4日10名
本郷中学校 東京 同居の保護者のもとから通学できる者 2月1日100名・2月2日140名・2月5日40名
森村学園中等部 神奈川 入学後、保護者の元から通学できる児童 2月1日40名・2月2日30名・2月4日20名
日本女子大学附属中学校 神奈川 2027年3月に小学校卒業見込みで、入学後保護者の元から通学できる者 2月1日午前約85名・午後約30名ほか
恵泉女学園中学校 東京 保護者のもとから通学できる者(ほかに本校のキリスト教教育に賛同する者) 2月1日午後80名・2月2日午前70名・2月3日午後30名
女子聖学院中学校 東京 自宅から通学可能であること 2月1日50名・30名/2月2日5名・20名
品川女子学院中等部 東京 保護者と同居のこと 2月1日90名・午後20名/2月2日60名/2月4日30名
サレジオ学院中学校 神奈川 自宅通学が可能な児童(男子) 2月1日110名・2月4日50名
香蘭女学校中等科 東京 通学時間や居住地の制限はないが、保護者の元から通えることが条件(入試Q&A) 2月1日100名・2月2日60名

13校のうち、通学時間を分単位で示すのは女子学院中学校だけである。慶應義塾中等部と神奈川大学附属中学校は居住エリアで線を引き、残る10校は「保護者と同居」「保護者のもとから通学」「自宅から通学可能」という書き方をしている。跡見学園中学校はさらに踏み込んで、登校時刻に間に合うかどうかを条件に入れている。

通学90分以内を明記する女子学院中学校

女子学院中学校の2027年度生徒募集要項は、募集人員240名、入学試験は2月1日の午前8時30分から筆記試験(国語・社会・理科・算数、各40分100点)、午後0時35分からグループ面接という日程である。出願はインターネット出願と書類の郵送の併用で、ID登録が2026年11月9日午前10時、出願情報の入力が12月20日午前10時から2027年1月15日正午まで、受験料は25,000円。報告書と受験票控えの郵送は1月15日消印有効となっている。

出願資格には、卒業見込みであることに加えて親元からの通学と90分以内という2つの条件が入る。90分は「通常の交通機関(特別料金を必要としない)」で測るため、新幹線や特急料金を使って短縮した時間では条件を満たさない。自転車・自家用車の利用も認められていない。遠隔地から受験する場合は出願の時点で90分以内の住所が決まっている必要があるとされ、合格後に探すという順番は取れない。同校は要項の冒頭で、過度の受験勉強や遠距離通学で健康に支障が出る事態は教育上の責任を果たせないという趣旨の説明を保護者向けに記しており、この条件が学校の方針と結びついていることが読み取れる。

居住エリアで定める慶應義塾中等部と神奈川大学附属中学校

慶應義塾中等部の入試Q&Aは、2027年度入試の受験資格を「2027年3月に小学校またはこれと同等の学校を卒業見込みの者」または「2014年4月2日から2015年4月1日までに生まれ、海外に在住し2027年4月以降日本に居住予定の者」とした上で、いずれも東京都およびその周辺に保護者(代理可)が居住、または居住予定の者に限ると添えている。出願は12月21日13時から1月9日19時までにインターネットで登録し、入学願書と報告書を1月6日から9日のいずれかの日に郵便局窓口へ差し出して1月12日着指定の簡易書留で郵送する方式で、窓口受付は行わない。配達指定日に書類が届かない場合は受験できないとしている。

神奈川大学附属中学校は、出願資格を「2027年3月に小学校を卒業見込みの者または既に小学校を卒業した者で、2027年4月1日時点で通学圏内に居住している者」と定める。出願時点ではなく入学時点を基準にしているため、受験時に遠方にいても入学までに通学圏内へ転居する家庭は条件を満たせる。日程は第1回が2月1日(集合15時、開門13時、80名)、第2回が2月2日(集合8時20分、開門7時30分、100名)、第3回が2月4日(20名)で、検定料は各回25,000円、第1回から第3回を同時に出願する場合は50,000円になる。

「保護者と同居」「保護者のもとから通学」と書く学校

最も多い型が、距離や時間ではなく保護者との同居を条件にするものである。本郷中学校は受験資格に「同居の保護者のもとから通学できる者」と「入学後、楽しく学校生活を送ることができる者」を並べて記載し、募集人員は280名(第1回2月1日100名、第2回2月2日140名、第3回2月5日40名)、検定料は各回25,000円で複数回出願して入学した場合は未受験分を返金する。品川女子学院中等部は出願資格を「2027年3月小学校卒業見込みの女子」「保護者と同居のこと」の2点とし、第1回2月1日90名、算数1教科午後入試20名、第2回2月2日60名、4科目表現力・総合型2月4日30名という4種類の入試を行う。

同居できない場合の扱いまで書いているのが東海大学附属高輪台高等学校中等部である。出願資格は「2027年3月小学校を卒業見込みの者で、保護者と同居している者」だが、注記でやむを得ない理由で保護者との同居ができない場合は、通学可能な地域に住む成年者で独立の生計を営み親権者と同等の責任を持つ者との同居を条件とするとしている。募集人員は第1回45名・第2回25名・第3回10名、出願は1月10日10時から始まり、1月中の複数回同時出願なら2回35,000円・3回45,000円に割り引かれる。

日本女子大学附属中学校は「2027年3月に小学校卒業見込みで入学後保護者の元から通学できる者」で、第1回2月1日午前約85名、第2回2月1日午後約30名、第3回2月2日午後約30名、第4回2月3日午前約15名の4回。森村学園中等部は「入学後、保護者の元から通学できる児童」を条件に挙げ、2月1日40名・2月2日30名・2月4日20名の3回を実施する。恵泉女学園中学校は応募資格に「保護者のもとから通学できる者」と「本校のキリスト教教育に賛同する者」を含め、2月1日午後80名・2月2日午前70名・2月3日午後30名で募集する。女子聖学院中学校は「自宅から通学可能であること」とし、2月1日の第1回50名・スカラシップ30名、2月2日のBaM表現力入試5名・第3回20名という構成である。サレジオ学院中学校は「2027年3月小学校卒業見込みの男子で、自宅通学が可能な児童」で、募集人員160名をA試験(2月1日110名)とB試験(2月4日50名)に分けている。

登校時刻で線を引く跡見学園中学校、条件を置かない学校

跡見学園中学校の受験資格は4項目からなる。卒業見込みであること、日常登校時刻の8時までに登校可能な者(行事によっては8時より早く集合する場合がある)、入学後に保護者と同居しそこから通学できる者、そして学区制の適用はありませんという確認である。通学時間ではなく「毎朝8時に間に合うか」で判断する書き方で、始業時刻から逆算して通学可能性を測る発想になっている。一般入試は第1回が2月1日午前70名、第2回が2月2日午前50名で、集合8時・開場7時、検定料は各回25,000円。同校は受験資格について不明な点があれば必ず出願前に相談するよう求めている。

一方、居住や同居に触れない学校も多い。次の5校は出願資格を学齢・性別・資格のみで定めている。

学校名 所在 出願資格の書き方 補足
浅野中学校 神奈川 2014年4月2日から2015年4月1日までに生まれ、2027年3月に小学校等を卒業見込みの者。戸籍上の男子 2月3日・240名
成城中学校 東京 令和9年3月小学校卒業見込みの者(学区制なし)と明記 出願サイトは12月20日9時開設
暁星中学校 東京 令和9年3月小学校卒業見込み、または同等以上の学力があると認められた男子(暁星小学校の児童は除く) 2月2日約65名・2月3日約10名
鎌倉女学院中学校 神奈川 2027年3月に小学校を卒業見込の女子(英語コミュニケーション入試のみ別に資格要件) 一般入試・英語資格は英検3級以上
富士見中学校 東京 2027年3月小学校卒業見込みの女子 出願は1月10日0時開始

浅野中学校は生年月日の範囲と「戸籍上の男子」で資格を定め、居住地には触れない。成城中学校は「学区制なし」と要項にわざわざ書いており、公立の学区と混同しないよう示している。暁星中学校は居住条件を置かない代わりに暁星小学校の児童を除くという条件を明記する。香蘭女学校中等科は入試Q&Aで通学時間や居住地の制限はないが保護者の元から通えることが条件と答え、在校生の約68%が東京23区内、約24%が横浜市・川崎市から通学し、平均通学時間は60分、90分以上かけて通う生徒もいると説明している。制限を置かない学校でも、実際の通学時間は1時間前後に収まっていることが分かる。

都立中は「都内に住所」と「入学後も都内から通学」が条件

私立と対照的に、公立の中高一貫校は居住要件が制度として決まっている。東京都教育委員会が2026年6月11日に報告した令和9年度の実施要綱・同細目によると、特別枠募集・一般枠募集の応募資格は、小学校を令和9年3月に卒業見込みであることなどに加えて、保護者と同居している者で、都内に住所を有し、入学後も引き続き都内から通学することが確実な者とされている。父母のどちらか一方とも同居していない場合は、行方不明・療養・転勤・離婚などの事由を示して小学校長が具申書(様式12)を提出する必要がある。都外の都立・区立特別支援学校小学部等を卒業見込みの者や都外の児童福祉施設に入所する東京都の措置児童については、入学日までに保護者と同居し都内へ転居することが確実な者が対象になる。東日本大震災や令和6年能登半島地震などの被災者には別の特例が置かれている。

令和9年度の日程は、出願の入力期間が2026年12月17日から2027年1月18日17時まで、書類提出期間が1月8日から1月18日まで。検査日と合格発表日は次のとおりである。

募集区分 検査実施日 合格発表日
特別枠募集 2027年2月1日 2027年2月2日
一般枠募集 2027年2月3日 2027年2月9日
海外帰国・在京外国人生徒枠募集 2027年1月25日 2027年1月29日
追検査(インフルエンザ等学校感染症罹患者等) 2027年2月12日 2027年2月16日

海外帰国・在京外国人生徒枠の出願受付日は1月8日と12日、追検査の出願受付日は2月4日と5日である。私立の出願資格が学校ごとの判断である一方、都立は書式と手続きまで決まっているのが大きな違いになる。

保護者・受験生への影響と対策

第一に、受験校を決める段階で要項の「出願資格」欄を必ず読むことである。日程や科目と違って塾の資料や受験情報サイトに転記されにくい項目で、学校のサイトでしか確認できないことが多い。特に通学時間が1時間を超える学校を併願に入れる場合、女子学院中学校のように上限が明記されていれば出願自体が成立しない。

第二に、別居・単身赴任のある家庭は出願前に学校へ相談することである。私立の「保護者と同居」は父母両方との同居を求める趣旨ではないのが通例で、東海大学附属高輪台高等学校中等部のように代替となる同居者の条件を要項に書いている学校もある。跡見学園中学校は受験資格について出願前の相談を求め、聖光学院中学校も受験上や修学上の配慮が必要な場合は事前相談を求めている。判断に迷う条件は学校に直接確認するのが早い。都立中を受ける場合は、具申書という書式が決まっているため、小学校の担任にも早めに伝えておきたい。

第三に、転居の予定がある場合は基準時点を確認することである。神奈川大学附属中学校は2027年4月1日時点の居住地、女子学院中学校は出願時点の住所確定、都立中は入学日までの転居が確実であること、とそれぞれ基準が違う。4月の入居が決まっていれば足りる学校と、1月の出願時に住所が決まっていなければならない学校があるため、転勤の内示が出ている家庭は時期の読み替えが必要になる。

第四に、通学時間の測り方である。女子学院中学校の90分は特別料金のかからない交通機関で計算し、自転車・自家用車は使えない。乗り換え検索の最短経路が特急利用になっている場合、条件判定上の所要時間とはずれる。朝のラッシュ時の所要時間と始業時刻も合わせて確認しておくと、跡見学園中学校のような「8時までに登校可能か」という基準にも対応できる。

今後のスケジュール

出願資格の確認に関係する日付を並べると次のようになる。2026年11月9日に女子学院中学校のID登録が始まり、12月17日に都立中の入力期間、12月20日に成城中学校の出願サイト開設と女子学院中学校の出願情報入力、12月21日に慶應義塾中等部の出願登録が始まる。年明けは1月6日に森村学園中等部と日本女子大学附属中学校の出願開始および慶應義塾中等部の書類差出開始、1月8日に浅野中学校、1月10日に跡見学園中学校・本郷中学校・品川女子学院中等部・東海大学附属高輪台高等学校中等部・富士見中学校・女子聖学院中学校などが出願を開始する。女子学院中学校の締切は1月15日正午と早く、1月18日17時に都立中の入力期間が終わる。試験は2月1日から始まり、都立中の一般枠は2月3日である。

要項の細部は公開後に修正されることがあり、各校も変更の可能性を注記している。出願直前にもう一度、志望校のサイトで出願資格の欄を確認しておきたい。

よくある質問

単身赴任で父親と別居しています。「保護者と同居」の学校には出願できないのでしょうか。
私立の要項にある「保護者と同居」は、一般に受験生が保護者のもとから通学できる状態を指し、父母双方との同居を求める趣旨ではないのが通例である。ただし判断は学校ごとなので、跡見学園中学校のように出願前の相談を求める学校もある。東海大学附属高輪台高等学校中等部は、やむを得ず保護者と同居できない場合に、通学可能な地域に住む成年者で独立の生計を営み親権者と同等の責任を持つ者との同居を条件とすると要項に明記している。都立中では、父母のどちらか一方とも同居していない場合に小学校長が具申書(様式12)を提出する手続きが定められている。

いま遠方に住んでいますが、入学までに引っ越す予定です。出願できますか。
基準時点が学校によって違う。神奈川大学附属中学校は2027年4月1日時点で通学圏内に居住していることを条件にしており、入学までに転居する家庭も対象になる。これに対して女子学院中学校は、遠隔地から受験する場合は出願時に90分以内の住所が決まっている必要があるとしている。都立中の場合は、都外の特別支援学校小学部等を卒業見込みの者や都外の児童福祉施設に入所する東京都の措置児童について、入学日までに保護者と同居し都内へ転居することが確実な者という条件が置かれている。

祖父母の家から通ったり、寮に入って通うことはできますか。
保護者との同居を出願資格にしている学校では、祖父母宅からの通学は原則として条件を満たさない。東海大学附属高輪台高等学校中等部のように、親権者と同等の責任を持つ成年者との同居を代替として認める規定を持つ学校もあるが、要項に書かれていない場合は個別の相談になる。都立中では、父母の療養・転勤や離婚などの事由があり、おじ・おば・祖父母・兄姉等と同居している場合は具申書の提出によって応募資格が認められる扱いになっている。首都圏の通学型の学校では、寮を前提にした出願は想定されていないことが多い。

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出典

最終更新: 2026年10月21日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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合格之助(中村先生)

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「倍率」「受験者数の推移」「合格可能性」「併願パターン」まで含めて、一人ひとりに合った本当に狙いやすい学校を見つけることです。