秋は過去問に手をつける季節である。1年分を解き終えて合計点を出したあと、必ず出てくるのが「この点で足りているのか」という問いだ。合格者の上位層と同じ点を取る必要はない。必要なのはその学校がその年に何点で合格を出したか――合格最低点である。

合格最低点は塾の資料や市販の過去問集にも載っているが、もとになっているのは各校が自校サイトで公表している入試結果データである。ところがこの公表のしかたが学校によってまったく違う。合格者の最低点を1点単位で出す学校、「合格基準点」という名前で出す学校、点ではなく得点率(%)だけを出す学校、受験者平均点は出すが最低点は出さない学校、倍率しか出さない学校が並存している。

本記事では、2026年2月に実施された入試(2026年度入試)の結果を自校サイトで公表している首都圏の私立中学13校について、公表値をそのまま拾い、満点が学校ごとに違うぶんを得点率に換算して横並びにした。あわせて、何をどこまで公表しているかという開示の差も整理している。数値はすべて各校公式ページ・公式PDFの記載で、2026年9月27日時点で確認できたものである。

公表のしかたは4つの型に分かれる

まず用語を整えておく。同じ「合格ライン」を指していても、学校サイトでの呼び名と中身が違う。

呼び名 意味 この記事で確認した学校
合格者最低点 合格した受験生のうち最も低い合計点。実際に合格が出た点として最も読みやすい 成城・攻玉社・吉祥女子・広尾学園・東京農業大学第一・鎌倉学園
合格点/合格最低点 学校が合格の線として設定した点。合格者最低点と一致する場合が多い 富士見・山手学院・大妻中野
合格基準点 上と同じ意味だが、回ごと・科目数ごとに別に設定していることを示す書き方 淑徳巣鴨
合格最低得点率 点ではなく満点に対する%で公表する。換算配点の学校で使われる 森村学園
(公表しない) 受験者平均点までは出すが最低点は出さない、あるいは倍率だけを出す 共立女子・山脇学園

点で出す学校でも、「合格者最低点」と「合格点」は厳密には別物である。前者は結果として最も低かった合格者の点、後者は学校が線を引いた点で、繰上合格を出した回では両者がずれることがある。成城中学校は「4科目の合計点が190点以上の者133名を合格としました」と本文で線を明示しており、この場合は両者が一致する。

4科入試の合格最低点と得点率

4科(または4科相当)の回を得点率の順に並べた。満点は320点・300点・340点・360点・400点と学校ごとに違うため、点だけを見比べても意味がない。得点率=合格最低点÷満点である。

学校 回次(試験日) 満点 合格最低点 得点率 合格者平均 受験者平均
東京農業大学第一 第4回(2/4午前) 400点 293点 73.2% 305.0点 235.4点
淑徳巣鴨 第2回スカラシップ(2/2午後) 300点 215点 71.7% — —
東京農業大学第一 第1回(2/1午前) 360点 247点 68.6% 260.1点 221.4点
淑徳巣鴨 第3回スカラシップ(2/3午前) 300点 203点 67.7% — —
山手学院 後期日程(2/6・4科) 360点 242点 67.2% — 195.6点
淑徳巣鴨 第1回スカラシップ(2/1午後) 300点 200点 66.7% — —
吉祥女子 第1回(2/1) 340点 222点 65.3% 238.0点 —
吉祥女子 第2回(2/2) 340点 221点 65.0% 236.0点 —
攻玉社 第1回(2/1) 300点 192点 64.0% 204.7点 183.9点
攻玉社 第2回(2/2) 300点 192点 64.0% 204.5点 176.9点
山手学院 A日程(2/1・4科) 360点 228点 63.3% — 208.0点
広尾学園 第3回・本科(2/5) 300点 188点 62.7% 197.2点 163.4点
成城 第3回(2/5) 320点 198点 61.9% 213.0点 173.3点
富士見 第1回・午前四科(2/1) 320点 197点 61.6% 220.4点 —
大妻中野 アドバンスト第1回(2/1・4科) 300点 183点 61.0% 202.4点 178.3点
広尾学園 第2回・本科(2/1午後) 300点 179点 59.7% 193.0点 167.5点
成城 第1回(2/1) 320点 190点 59.4% 207.1点 177.9点
山手学院 B日程(2/3・4科) 360点 209点 58.1% — 192.2点
広尾学園 第1回・本科(2/1) 300点 174点 58.0% 183.9点 151.9点
富士見 第3回・午前四科 320点 185点 57.8% 213.9点 —
富士見 第2回・午前四科 320点 184点 57.5% 208.2点 —
成城 第2回(2/3) 320点 182点 56.9% 202.4点 172.0点
鎌倉学園 3次(2/4) 320点 179点 55.9% 196.1点 152.8点
広尾学園 医進・サイエンス回(2/2午後) 300点 167点 55.7% 186.6点 150.6点
鎌倉学園 2次(2/2) 320点 177点 55.3% 193.1点 153.9点
大妻中野 アドバンスト第4回(2/3・4科) 300点 160点 53.3% 181.7点 158.2点
鎌倉学園 1次(2/1) 320点 163点 50.9% 184.0点 158.5点

27の回をならべて見えるのは、4科入試の合格ラインが満点の5割から7割台前半に収まっていることである。最も低い鎌倉学園1次の50.9%と、最も高い東京農業大学第一第4回の73.2%で22.3ポイントの開きがある。偏差値が近い学校同士でも得点率はそろわない。問題の難度と採点の重みづけが学校ごとに違うためで、「7割取れば受かる」という一般論は使えない。

合格者平均と合格最低点の差も学校差が大きい。鎌倉学園1次は合格者平均184.0点に対し最低163点で21点差だが、広尾学園第1回本科は183.9点に対し174点で10点差しかない。差が小さい回は合格者が狭い帯に密集しているということで、1問の取りこぼしが直接合否に効く。

「最終回がいちばん高い」は半分の学校だけ

後半日程は募集人員が少なく、上位校の不合格者が流れてくるため合格ラインが上がる――これはよく言われる。今回のデータで同一形式の回が複数ある10校を見ると、そのとおりになったのは5校で、残る5校は最終回が最高ではなかった。

学校 回ごとの得点率(実施順) 最も高い回
成城(4科) 59.4% → 56.9% → 61.9% 第3回
広尾学園(本科) 58.0% → 59.7% → 62.7% 第3回(回を追って上昇)
東京農業大学第一(4科) 68.6% → 73.2% 第4回
鎌倉学園(4科) 50.9% → 55.3% → 55.9% 3次(回を追って上昇)
山手学院(4科) 63.3% → 58.1% → 67.2% 後期日程
大妻中野(4科) 61.0% → 53.3% 第1回
富士見(午前四科) 61.6% → 57.5% → 57.8% 第1回
吉祥女子 65.3% → 65.0% 第1回
淑徳巣鴨(スカラシップ4科) 66.7% → 71.7% → 67.7% 第2回
攻玉社(一般学級) 64.0% → 64.0% 同率

大妻中野は第1回61.0%に対し第4回が53.3%で、後半のほうが7.7ポイント低い。一方2科の回では56.5%→60.5%→70.0%と上がっており、同じ学校の中でも科目数ごとに動きが逆になっている。淑徳巣鴨のスカラシップ入試は第2回71.7%が最高で、最終の第3回は67.7%に下がった。

つまり後半日程が不利かどうかは学校と入試種別ごとに実際の数字を見ないと判断できない。併願校の組み方を「2月4日以降は厳しいから」という一般論で決めると、大妻中野第4回のような回を落とすことになる。

1科入試・2科入試は得点率の目安が違う

算数1科や2科の回は、4科の感覚で目標点を置くと外れる。科目数が少ないほど得点のばらつきが大きく、学校が線を引く位置も変わる。

学校 入試 満点 合格最低点 得点率 合格者平均/受験者平均
攻玉社 特別選抜A方式(2/5) 算数[共通]100+算数[発展]150=250点 203点 81.2% 215.3点/166.4点
淑徳巣鴨 第2回スカラシップ2科(2/2午後) 200点 147点 73.5% —
山手学院 特待選抜・特待合格(2/1・2科) 200点 146点 73.0% —/115.5点
大妻中野 アドバンスト第5回(2/4・2科) 200点 140点 70.0% 152.5点/123.3点
攻玉社 特別選抜B方式(2/5) 算数[共通]100+国語100=200点 139点 69.5% 149.4点/113.3点
山手学院 後期日程(2/6・2科) 200点 128点 64.0% —/102.8点
山手学院 A日程(2/1・2科) 200点 127点 63.5% —/115.4点
鎌倉学園 算数選抜(2/1) 150点 93点 62.0% 107.7点/83.3点
攻玉社 国際学級・国語算数(1/10) 200点 121点 60.5% 140.1点/126.6点
大妻中野 アドバンスト第3回(2/2午後・2科) 200点 121点 60.5% 136.0点/120.2点
富士見 午後入試・算数1教科 100点 60点 60.0% 74.1点/—
東京農業大学第一 第2回・算数理科選択(2/1午後) 200点 114点 57.0% 129.0点/111.8点
山手学院 特待選抜・一般合格(2/1・2科) 200点 112点 56.0% —/115.5点
攻玉社 国際学級・英語(1/10) 100点 51点 51.0% 66.1点/52.3点

幅は51.0%から81.2%まで30ポイント以上ある。最も高い攻玉社特別選抜A方式は算数を共通100点と発展150点の2本立てにした250点満点で、8割を超えないと合格が出ていない。受験者平均166.4点(66.6%)との差は36.6点で、ここは算数が得意な層だけが集まる回である。

逆に山手学院の特待選抜は特待合格146点・一般合格112点と2本の線がある。一般合格の112点は受験者平均115.5点を下回っている。同じ試験で「特待を狙う受験と、合格を取りにいく受験」が同居しているためで、特待基準だけを見て諦める必要はない。

富士見の午後算数1教科は100点満点で合格点60点。同校の午前四科が197点/320点=61.6%なので、得点率で見るとほぼ同じ水準である。1科入試は「軽い」入試ではなく、4科と同じ高さの線が1科目に集約されているだけだと読める。

合格最低点を公表しない学校、一部だけ公表する学校

点を出さない学校も、出す情報の範囲が段階的に分かれている。

学校 公表している範囲 公表していない範囲
共立女子 4回すべての募集定員・志願者数・受験者数・合格者数・実質競争率と、教科別の受験者平均点(2/1入試は合計170.0点/300点、2/2入試166.4点/300点、2/3午後英語4技能型92.9点/200点、2/3午後合科型108.9点/200点) 合格者平均点・合格最低点
山脇学園 一般A(2/1・4教科)実質4.3倍、B(2/2・2教科)4.3倍、C(2/4・4教科)6.9倍、一科入試の国語3.4倍・算数2.3倍、探究サイエンス6.7倍など志願者数・受験者数・合格者数・実質倍率 2026年度分の教科別得点(平均点・最低点いずれも掲載なし)
富士見 4科・算数1教科の合格点、合格者の最高点・最低点・平均点 受験生(受験者全体)の教科ごとの平均点。ページに明記
大妻中野 アドバンスト入試5回分の合格者・受験者の最高点・最低点・平均点と教科別平均 グローバル入試・海外帰国生入試の得点結果。「非公表」と明記
淑徳巣鴨 一般・スカラシップ各回の合格最高点と合格基準点 第2回一般入試(未来力入試の総合型・算数1科)の得点。「非公開」と表記
森村学園 合格最低得点率(%)と受験者・合格者の教科別平均点 点数としての合格最低点

森村学園は200点への換算配点を採るため、点ではなく率で公表している。2026年度は第1回64.0%、第2回63.5%、第3回63.5%、帰国生入試51.0%であった。受験者平均は第1回123.4点/200点、第2回116.5点、第3回114.0点で、合格ラインは3回とも63〜64%でほぼ動いていない。回ごとに難度が変わっても学校側の線が一定であることが率で示されている例である。

広尾学園はインターナショナルSGコースについて、合格者最低点に加えて「そのうち本科で合格した合格者の最低点」をかっこ書きで併記している。第2回は198点(本科合格は179点)、第3回は200点(同188点)で、SGで出願して本科合格になった場合の線が別に読み取れる。コース併願のある学校では、この種の注記まで読まないと自分に当てはまる数字を取り違える。

前年と比べると――吉祥女子は30点下がった

複数年分を同じ様式で載せている学校では、年による振れ幅がわかる。吉祥女子は過去3年を並べて公表しており、第1回(340点満点)の合格者最低点は2024年度229点・2025年度252点・2026年度222点と動いた。2025年度から2026年度で30点、得点率で8.8ポイント下がっている。

吉祥女子 第1回(340点満点) 2024年度 2025年度 2026年度
合格者最低点 229点 252点 222点
得点率 67.4% 74.1% 65.3%
合格者平均点 245.8点 267.3点 238.0点
合格者最高点 283点 307点 289点
受験者数/合格者数 571名/187名 548名/190名 620名/205名

合格者平均も267.3点から238.0点へ29.3点下がっており、受験生の学力が落ちたのではなく問題が難しくなったと読むのが自然である。教科別に見ると合格者平均は算数が85.7点から68.2点へ17.5点、国語が75.8点から60.1点へ15.7点下がった一方、社会は52.0点から52.9点、理科は53.8点から56.9点へむしろ上がっている。下げ幅は国語と算数の2教科で生じており、社会・理科では生じていない。

ここから言えるのは、合格最低点は1年分だけ見てはいけないということである。2025年度の252点を目標に据えて過去問に取り組むと、実際の線より30点高い設定で自分を測ることになる。複数年を公表している学校では最も低い年と最も高い年の両方を見て、その幅の中で考えるほうが実態に近い。

保護者・受験生への影響と対策

第一に、過去問の採点は合計点だけでなく得点率に直すことである。満点が300点の学校と400点の学校を同じ「200点取れた」で比べても意味がない。東京農業大学第一は第1回が360点満点、第4回が400点満点で満点そのものが違う。得点率に直せば68.6%と73.2%で、後半のほうが4.6ポイント高いと判断できる。

第二に、合格者平均点ではなく合格最低点を目標に置くことである。合格者平均は合格者の真ん中で、そこに届かなくても合格は出ている。成城第1回は合格者平均207.1点だが合格最低点は190点で、17点の余地がある。鎌倉学園1次は合格者平均184.0点に対し最低163点で21点の余地がある。過去問で合格者平均に達しないことを理由に志望校を下げる必要はない。

第三に、受験者平均点が公表されている回では、自分がどの位置にいるかを平均との距離で測れる。東京農業大学第一の第2回(算数理科選択・200点満点)は受験者平均111.8点に対し合格最低点114点で、差はわずか2.2点である。この回は平均点を少し上回れば合格圏という構造で、難問を取りにいくより取りこぼしを消すほうが効く。逆に攻玉社特別選抜A方式は受験者平均166.4点に対し合格最低点203点で36.6点上に線がある。同じ対策では届かない。

第四に、公表されていない数字を推測で埋めないことである。共立女子と山脇学園は2026年度の合格最低点を公表していない。塾の資料に数字が載っている場合、それは学校の公表値ではなく模試の受験者データからの推定である可能性がある。学校公表値と推定値は区別して扱い、志望校の最終判断は公表値のある回を軸に組むほうが安全である。

今後のスケジュール

時期 起きること
2026年10月〜11月 東京・神奈川の2027年度募集要項が出そろう。配点・満点が変わる学校では過去の合格最低点をそのまま使えなくなるため、要項の配点欄を先に確認する
2026年11月〜12月 過去問演習が本格化する時期。この記事の得点率を目標設定に使う
2026年12月〜2027年1月 帰国生入試・埼玉千葉入試の実施。森村学園の帰国生入試(12月)のように、一般入試と合格ラインが大きく違う(2026年度は51.0%)回がある
2027年2月1日〜 東京・神奈川入試。2026年度は攻玉社の特別選抜・成城第3回・広尾学園第3回が2月5日、山手学院の後期日程が2月6日だった。2027年度の日程は各校の2027年度募集要項で確認する
2027年3月〜4月 各校が2027年度入試の結果データを自校サイトに掲載。掲載時期は学校ごとに異なり、9月時点でも前年度分しか載っていない学校がある

なお、結果データの更新は学校によって遅い。今回調べた中でも、2026年2月実施分をまだ掲載せず前年度までで止まっているページがあった。ページ上の年度表記を必ず確認し、いつの入試の数字かを取り違えないことが前提になる。

よくある質問

合格最低点を取れば必ず合格できるのですか

その年のその回に限れば、合格最低点と同じ点を取った受験生は合格しています。ただし合格最低点は毎年動きます。吉祥女子第1回は2025年度252点から2026年度222点へ30点動きました。過年度の合格最低点は「その年の結果」であって、翌年の合格保証ラインではありません。複数年を公表している学校ではいちばん高い年の数字を目標に置き、1年分しか公表されていない学校では10点程度の余裕を見ておくのが現実的です。

「合格者最低点」と「合格基準点」「合格点」は何が違うのですか

指しているものは同じ「合格の線」ですが、成り立ちが違います。合格者最低点は結果として最も低かった合格者の点で、成城・攻玉社・吉祥女子・広尾学園・東京農業大学第一・鎌倉学園がこの表記です。合格点(富士見・山手学院)や合格基準点(淑徳巣鴨)は学校があらかじめ引いた線で、淑徳巣鴨のように回ごと・科目数ごとに別の基準を設けていることを示す書き方です。森村学園は点ではなく合格最低得点率(%)で公表しています。実務上はどれも「この点以上で合格が出た」と読んで差し支えありませんが、繰上合格を出した回では学校が引いた線より低い点の合格者が出ることがあります。

得点開示を請求すれば自分の点数はわかりますか

学校によります。今回確認した13校のうち、受験生本人への得点開示の手続をこのページに書いている学校はありませんでした。得点開示は募集要項や入試結果ページではなく、各校のよくある質問(Q&A)ページに書かれていることが多いため、志望校ごとにそちらを確認してください。合格発表後に開示を受け付ける学校、不合格者に限って開示する学校、いっさい開示しない学校があり、受け付ける学校でも申請期間が発表直後の数日間に限られることがあります。開示を前提に併願を組むのであれば、出願前に各校へ確認しておくのが確実です。

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出典

最終更新: 2026年9月27日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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「倍率」「受験者数の推移」「合格可能性」「併願パターン」まで含めて、一人ひとりに合った本当に狙いやすい学校を見つけることです。