2027年度(令和9年度)の募集要項が各校から出そろい始めた。試験日、出願期間、合格発表の時刻——確認する順番はおおむね決まっているが、最後まで読み飛ばされやすいのが「試験当日の持ち物」の数行である。ここは要項の末尾か、「受験上の注意」という小さな見出しの下に置かれていることが多い。

しかしこの数行は、学校によって書いてあることが真逆になる。上履きを必ず持参させる学校と、受験生・保護者とも不要と明記する学校。腕時計を机の上に置いてよいと認める学校と、腕時計型の端末ごと試験場に持ち込ませない学校。算数で定規を使わせる学校と、定規・コンパス・分度器をすべて使用不可にする学校。「前年と同じ」「どこも同じ」という前提が通用しない項目なのだ。

本記事では、2026年10月2日時点で公開されている首都圏11校の2027年度募集要項・受験上の注意に書かれた記述だけを根拠に、持ち物と持込制限を学校別に整理した。前年度の要項しか公開されていない学校、公開ページの本文を確認できなかった学校は対象から外している。塾や受験情報サイトの二次情報は使っていない。

上履きは「不要」が多数派、ただし持参必須の学校がある

保護者からの質問がもっとも多いのが上履きである。11校の要項を読み比べると、明確に「不要」と書く学校が6校、「持参」を指示する学校が4校に分かれた。しかも同じ学校でも、受験する会場によって答えが変わる例がある。

都県 学校 上履き 要項の記述
埼玉 栄東中学校 不要 「受験生・保護者ともに上履きは不要です」
埼玉 大宮開成中学校 持参 持ち物に「上履き・下足入れ(ビニール袋など)」
埼玉 獨協埼玉中学校 会場で異なる 本校会場は「上履き・下足入れ」持参。「大宮・武蔵浦和会場は上履き・下足入れ不要」
千葉 東邦大学付属東邦中学校 不要 「受験票・筆記用具(上履きは使用しません)」
千葉 昭和学院秀英中学校 持参 持ち物に「上履き、下足入れ用の袋」。保護者も持参を案内
東京 山脇学園中学校 不要 「上履きは不要です」
東京 世田谷学園中学校 持参 「上履を持参してください」
東京 三田国際科学学園(旧・三田国際学園) 不要 「上履きは必要ありません」
東京 本郷中学校 記載なし 持ち物は受験票・写真票・筆記用具・定規・マスク・水筒などと記載
東京 富士見丘中学校 記載なし 持ち物は受験票・受験票控え・筆記用具・時計と記載
神奈川 山手学院中学校 不要 「試験当日の持ち物 受験票・筆記用具 ※上履き不要」

注意したいのは獨協埼玉中学校である。同校は1月10日から17日までの4日程を本校以外の会場でも実施しており、要項は本校会場について上履きと下足入れの持参を求める一方、大宮会場と武蔵浦和会場については不要と書き分けている。「学校ごと」ではなく「受験する会場ごと」に確認が必要な項目だということだ。あわせて同校は、大宮会場では昼食をとれるが保護者控室はないとも明記している。

また昭和学院秀英中学校は、受験生の持ち物として上履きと下足入れ用の袋を挙げたうえで、「保護者の方々へ」の項でも上履きと下足入れ用の袋の持参を求めている。付き添いの保護者の分まで用意が必要になる。

時計は「机に置ける」「教室にある」「持ち込めない」の3タイプ

時計の扱いは3つに分かれる。①腕時計を机の上に置くことまで認める学校、②試験室に時計があるため持参は任意とする学校、③通信機能を持つ腕時計型端末ごと持ち込みを禁じる学校である。どのタイプでも共通するのは「時計以外の機能がついたものは使えない」という制限で、スマートウォッチは原則すべての学校で不可だった。

学校 タイプ 要項の記述
東邦大学付属東邦中学校 机上に置ける 「時計の使用を認めます。机の上に置くこともできます。その際、アラームは鳴らないようにしておいてください」
山脇学園中学校 教室にあり・持参は任意 「時計は試験教室に設置されていますが、場所によっては見えにくいと感じる場合もあります。ご心配な方は、計時機能のみの腕時計をお持ちください。使用の際は、机の上に置いてください」
昭和学院秀英中学校 教室にあり・持参は任意 「時計は試験室にあります。持参する場合には時計機能のみのものを使用してください」
三田国際科学学園(旧・三田国際学園) 教室にあり 「教室に時計はあります」。電子機器類はすべて電源を切ってカバンへ
栄東中学校 持参可・機能制限 「時計は、時計以外の機能がついたものは試験中に使用できません」
富士見丘中学校 持ち物に明記 試験当日の持ち物に「時計」を列挙
世田谷学園中学校 腕時計型端末は持込不可 「時計はアラーム機能を停止させ」/「スマートフォンや携帯電話・腕時計型端末などの通信機器は試験場に持ち込めません」

山脇学園中学校と昭和学院秀英中学校の書き方は親切だ。教室に時計はあるが見えにくい席もありうる、だから心配なら計時機能だけの腕時計を持ってきて机に置いてよい——と条件まで書いている。逆に世田谷学園中学校は腕時計型端末を通信機器として扱い、試験場への持ち込み自体を認めていない。同校はさらに定規・コンパス・分度器・下敷き・計算機・マーカー類もまとめて使用不可としている。

定規・コンパス・分度器は学校ごとに判断が分かれる

算数の作図用具は、要項の記述がもっともはっきり割れた項目である。「使用不可」と書く学校が多数だが、本郷中学校は理科で指示された場合のみ定規を使えると明記しており、持ち物に定規が入っている。「持っていくと不正行為になるのか」「持っていかないと解けないのか」が学校で逆になるため、ここは思い込みで判断できない。

学校 定規 コンパス・分度器 備考
本郷中学校 持参(理科で指示された場合のみ使用可) 三角定規・コンパス・分度器は使用不可 持ち物に「定規」を明記
大宮開成中学校 使用不可 使用不可 「定規・コンパス・分度器は使用不可」
昭和学院秀英中学校 使用不可 使用不可 答案を電子採点するためHB以上の濃さを指定
世田谷学園中学校 使用不可 使用不可 下敷き・計算機・マーカー類も使用不可
東邦大学付属東邦中学校 バッグにしまう バッグにしまう 筆箱やケース類、下敷きも使用不可
山脇学園中学校 持参不要 持参不要 「持参する必要はありません」
富士見丘中学校 不要 不要 「筆記用具(定規・コンパスは不要)」

筆記用具そのものにも条件がつく。栄東中学校は「鉛筆(HB以上の濃さのもの。シャープペンシル可)」、獨協埼玉中学校は「黒鉛筆・シャープペンシル・消しゴム」、昭和学院秀英中学校は「鉛筆またはシャープペンシルと消しゴムのみ」で答案を電子採点するためHB以上の濃さを指定している。三田国際科学学園(旧・三田国際学園)は「筆記用具の貸出はありません」と断っており、予備を用意しておく必要がある。

机の上に出せるものを限定する学校も目立つ。東邦大学付属東邦中学校は「机の上には受験票・筆記用具のほかは何も置かないでください。机の中にものを入れてはいけません」とし、昭和学院秀英中学校と三田国際科学学園も同じ趣旨を書いている。筆箱ごと机に出す習慣があるなら、模試の段階から直しておいたほうがよい。

携帯電話の扱いと、休憩時間の飲食の可否

携帯電話・スマートフォンは「持参してよいが電源を切ってカバンへ」が共通ルールだが、世田谷学園中学校は試験場への持ち込み自体を禁じている点が異なる。また飲食は、水分補給だけを認める学校、軽食までよい学校、昼食場所を用意する学校と幅がある。

学校 電子機器 飲食・昼食
東邦大学付属東邦中学校 携帯電話・スマートフォン・スマートウォッチなど通信機能を持つ物は身につけない。電源を切ってバッグへ ネックストラップ・お守り・使い捨てカイロはバッグへ。ひざ掛けは使用不可。ティッシュは中身のみ机上に
昭和学院秀英中学校 携帯電話・スマートフォン・ウェアラブル端末(スマートウォッチ、スマートグラス等)・タブレットは使用不可。アラーム等を解除し電源を切ってカバンへ 持ち物に「飲み物」。午後特別入学試験は開門13:00で14:30まで試験室で昼食可
三田国際科学学園(旧・三田国際学園) すべての電子機器類を、試験会場を出るまで(休憩時間を含む)電源を切ってカバンへ 休憩時間に水分補給やアメ・チョコレートが可(水筒またはペットボトル持ち込み可)。保護者控室で昼食可
山脇学園中学校 携帯電話・スマートフォン等は電源をOFFにしてカバンへ。休み時間の使用も不可 校内での昼食は遠慮。2月1日の午前・午後を両方受験する場合のみ可(13:00〜14:20は校内の出入り不可)
世田谷学園中学校 スマートフォン・携帯電話・腕時計型端末などの通信機器は試験場に持ち込めない 2月1日のみ昼食の場所を用意(食事の提供はない)
大宮開成中学校 — 試験の合間の休み時間に試験教室での飲食が可能(においが出ないもの)。1月12日の午前・午後を両方受験する場合は12:10〜14:10に学生ホール1Fを昼食場所として利用可
栄東中学校 — 「休み時間中、軽食をとることも可能です」
本郷中学校 — 持ち物に「マスク、水筒など」。校内の冷水器は使用できないため水筒やペットボトルを持参
獨協埼玉中学校 — 「昼食不要」。大宮会場は昼食をとれるが保護者控室はない
富士見丘中学校 — 受験生が昼食をとる場所と保護者控室を用意

細かいが見落としやすいのが本郷中学校の一文である。「校内の冷水器は使用できません。水分をとりたい場合は、水筒やペットボトルをご持参ください」。受験生に水筒を持たせない家庭だと、当日まったく水が飲めないことになる。三田国際科学学園(旧・三田国際学園)が休憩時間のアメ・チョコレートまで明示的に認めているのとは対照的だ。

また東邦大学付属東邦中学校の受験上の注意は11校で最も詳しく、ネックストラップやお守り、使い捨てカイロをバッグにしまうこと、ひざ掛けは使用できないことまで書いている。防寒のために持たせたものが当日しまわせられる前提で準備したい。

保護者・受験生への影響と、いま確認しておくこと

持ち物の差は、当日の得点に直接は影響しないように見える。だが実際には「使えると思っていた道具が使えない」「教室に時計がないのに腕時計を持たせなかった」という形で、試験中の時間配分を崩す。11校の要項を読んだ上で、出願前後に確認しておきたいのは次の4点である。

1. 受験する会場ごとに持ち物を確認する。 獨協埼玉中学校のように、本校会場と外部会場で上履きの扱いが変わる学校がある。要項の「会場」欄と「持ち物」欄を必ずセットで読む。

2. 時計は「計時機能だけのもの」を1つ用意する。 教室に時計がある学校でも、山脇学園中学校が書くように席によっては見えにくい。多機能ウォッチは11校すべてで使えないため、アナログかデジタルの単機能品を模試から使い慣れておくのが安全である。

3. 作図用具は「使用不可」を前提に練習する。 定規を持ち物に挙げているのは本郷中学校(理科で指示された場合のみ)と富士見丘中学校(不要と明記)のように学校差が大きい。志望校が使用不可なら、過去問演習の段階から定規なしで図を描く練習をしておく。

4. 机の上に出せるものを事前に絞る。 受験票と筆記用具だけ、という学校が複数ある。筆箱・下敷き・ケース類をしまう動作を当日初めてやると落ち着かない。

なお、持ち物の記述は要項の改訂で変わることがある。10月以降に「詳細版」や「入学試験に関する注意事項」を別途公開する学校もあり、獨協埼玉中学校は2026年10月2日時点で令和9年度版の『入学試験に関する注意事項』を「ただいま準備中」としている。出願直前にもう一度開き直すことを前提にしたい。

今後のスケジュール

時期 確認すること
2026年10月 東京・神奈川の私立中の2027年度募集要項が本格的に公開。持ち物・受験上の注意の項を最初に確認する
2026年12月1日〜 埼玉県の私立中で出願開始(獨協埼玉中学校は12月1日10時)。出願完了後に公開される注意事項を読む
2026年12月中旬〜 各校が『入学試験に関する注意事項』『受験生の皆さんへ』などの当日案内を追加公開。山手学院中学校は高校入試で出願後に案内文のダウンロードを求めている
2027年1月10日〜 埼玉入試開始(栄東中学校1月10日、大宮開成中学校1月10日、獨協埼玉中学校1月10日)。外部会場の持ち物を再確認
2027年1月20日前後 千葉入試。昭和学院秀英中学校の午後特別入学試験は開門13:00・14:30まで試験室で昼食可
2027年2月1日〜 東京・神奈川入試。世田谷学園中学校・山脇学園中学校・三田国際科学学園(旧・三田国際学園)は2月1日の午前午後連続受験時の昼食対応が要項に明記されている

よくある質問

上履きは結局、持って行ったほうがよいのでしょうか

要項が「不要」と明記している学校では不要です。本記事で確認した11校のうち、栄東中学校・東邦大学付属東邦中学校・山脇学園中学校・三田国際科学学園(旧・三田国際学園)・山手学院中学校は要項に不要と書いています。一方、大宮開成中学校・昭和学院秀英中学校・世田谷学園中学校は持参を指示しており、獨協埼玉中学校は本校会場のみ持参です。「念のため持って行く」のは荷物が増えるだけで不利になることはありませんが、下足入れ用の袋まで求める学校(大宮開成中学校、昭和学院秀英中学校)があるので、持参指示がある場合は袋も忘れないでください。

スマートウォッチをしていくと不正行為になりますか

要項の文言どおりに読めば、試験中に身につけていた時点で問題になります。東邦大学付属東邦中学校は「携帯電話やスマートフォン、スマートウォッチなど、通信する機能を持った物を身につけてはいけません。電源を切ってバッグにしまってください」、昭和学院秀英中学校は「ウェアラブル端末(スマートウォッチやスマートグラス等)」を使用不可とし、世田谷学園中学校は腕時計型端末の試験場への持ち込み自体を認めていません。栄東中学校も「時計以外の機能がついたもの」は試験中に使用できないとしています。時刻確認用には計時機能だけの時計を別に用意してください。

休憩時間に飲み物やお菓子をとってもよいのですか

学校によって明確に異なります。三田国際科学学園(旧・三田国際学園)は「休憩時間に水分補給やアメ・チョコレートなどをとることは可能です(水筒またはペットボトルの持ち込み可)」と明記し、栄東中学校は「休み時間中、軽食をとることも可能です」、大宮開成中学校は「試験の合間の休み時間に、試験教室での飲食は可能です」としたうえでにおいが出ないものを求めています。昭和学院秀英中学校は持ち物に「飲み物」を挙げています。一方、本郷中学校は校内の冷水器が使えないため水筒やペットボトルの持参を求めており、山脇学園中学校は校内での昼食を原則遠慮するよう書いています。志望校の要項の該当箇所を必ず読んでください。

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出典

最終更新: 2026年10月2日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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合格之助(中村先生)
合格之助(中村先生)

中学受験専門塾で長年、受験生と保護者の進路相談を担当している中村です。偏差値・倍率・過去問傾向・学校ごとの出題特徴をもとに、志望校選びをわかりやすくサポートしています。

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