中学受験の志望校選びで最後に効いてくるのが「入ったあとの進路」です。大学通信が2026年8月17日に公表した「2026年難関10国立大現役進学者数」の神奈川県分には、公立25校・私立31校の計56校が掲載されました。私立で最も多かったのは聖光学院の102人で、続いて浅野中学校・高等学校76人、栄光学園64人、洗足学園59人、逗子開成39人と並びます。

この調査が示しているのは、学校案内でよく目にする「合格者数」ではなく実際にその大学へ進んだ「現役進学者数」です。合格者数は1人が複数の大学に合格すれば重複して数えられますが、進学者数は1人につき1校しかカウントされません。学校どうしを並べて比べるには、こちらのほうが実態に近い数字になります。

この記事では神奈川県の私立31校の数字を整理したうえで、そのうち何校が中学受験で入れるのかを神奈川県が公表した令和9年度(2027年度)の私立中学校・私立中等教育学校の生徒募集要項と突き合わせ、さらに各校が自校サイトで公表している合格者数と並べて「合格」と「進学」がどれだけ違うのかを確認します。数値はすべて出典時点の公表値です。

この調査の読み方 ― 「合格者数」ではなく「現役進学者数」

大学通信は全国約4,300校を対象に進学状況のアンケートを実施し、回答のあった高校について難関10国立大学への現役進学者数と進学率を集計しています。難関10国立大学とは東京大、京都大、北海道大、東北大、名古屋大、大阪大、九州大、東京科学大、一橋大、神戸大の10大学です。なお神奈川の私立には中等教育学校も含まれており、桐蔭学園中等教育学校と自修館中等教育学校の2校が掲載されています。

表を見る前に、押さえておきたい前提が4つあります。

  • 数字は全入試枠の合計。一般選抜だけでなく、学校推薦型選抜・総合型選抜・系列校の内部進学を含みます。
  • 2026年7月31日現在の判明分。集計後に判明した進学者は含まれないため、実際の進学者がこれより多い場合があります。
  • 空欄は0人とは限らない。一部に未集計・未回答があります。表に名前がない学校の実績が0だという意味ではありません。
  • 進学率は卒業生に占める割合。卒業生数は高校発表によるもので、定時制・通信制を併設する学校はそれらを除いた全日制の数字です。

つまりこの数字は「その高校の3年生が実際にどこへ進んだか」を表す実態データであり、学校案内に載る延べ合格者数とは性質が違います。

神奈川の私立31校 難関10国立大への現役進学者数

大学通信の集計に掲載された神奈川県の私立高校は31校でした。現役進学者数の多い順に並べ、神奈川県の令和9年度の生徒募集要項に中学の募集があるかどうかを「中学募集」欄に示します。学校名は略称ではなく正式名称に直しています。

学校名 卒業生数 現役進学者数 進学率(%) 中学募集
聖光学院 228 102 44.7 ○
浅野 281 76 27.0 ○
栄光学園 179 64 35.8 ○
洗足学園 241 59 24.5 ○
逗子開成 268 39 14.6 ○
サレジオ学院 180 35 19.4 ○
山手学院 443 21 4.7 ○
桐蔭学園高等学校 901 21 2.3 ―
フェリス女学院 169 20 11.8 ○
桐光学園 564 18 3.2 ○
公文国際学園 155 13 8.4 ○
桐蔭学園中等教育学校 269 10 3.7 ○
鎌倉学園 285 7 2.5 ○
中央大学附属横浜 344 7 2.0 ○
神奈川大学附属 208 6 2.9 ○
森村学園 162 5 3.1 ○
横浜共立学園 179 5 2.8 ○
横浜雙葉 178 5 2.8 ○
関東学院 226 5 2.2 ○
自修館中等教育学校 116 4 3.4 ○
カリタス女子 154 4 2.6 ○
日本大学 448 3 0.7 ○
横浜隼人 512 3 0.6 ○
湘南工科大学附属 582 3 0.5 ―
湘南白百合学園 150 2 1.3 ○
清泉女学院 163 2 1.2 ○
日本大学藤沢 403 2 0.5 ○
鎌倉女学院 145 1 0.7 ○
日本女子大学附属 364 1 0.3 ○
横須賀学院 433 1 0.2 ○
横浜清風 456 1 0.2 ―

31校の現役進学者数を合計すると545人です。上位5校(聖光学院・浅野・栄光学園・洗足学園・逗子開成)だけで340人を占め、私立全体の62.4%がこの5校に集中しています。進学率でも聖光学院44.7%、栄光学園35.8%、浅野27.0%、洗足学園24.5%と、卒業生の4人に1人以上がこの10大学へ現役で進んだ学校が4校ありました。

中学受験で入れるのは28校、高校からのみは3校

掲載31校を神奈川県の募集要項と突き合わせると、中学の募集がある学校は28校、高校からしか入れない学校は3校でした。

高校からのみ入学できる学校 現役進学者数 進学率(%)
桐蔭学園高等学校 21 2.3
湘南工科大学附属 3 0.5
横浜清風 1 0.2

この3校の合計は25人で、私立545人のうち4.6%にとどまります。裏を返せば神奈川の私立高校から難関10国立大へ現役で進んだ545人のうち520人(95.4%)は、中学受験で入れる28校の出身ということになります。東京大学に限るとこの偏りはさらに大きく、私立225人のうち222人(98.7%)が中学募集のある学校からでした。

なお桐蔭学園は、高校募集を行う桐蔭学園高等学校と、中学受験で入る桐蔭学園中等教育学校が別の学校として集計されています。表の上では同じ「桐蔭学園」でも、中学受験の対象になるのは中等教育学校のほうです。

大学別に見る ― 東京大318人のうち私立が225人

10大学ごとに、公立25校と私立31校の現役進学者数を並べました。県全体の合計は998人です。

大学 公立25校 私立31校 計
東京大 93 225 318
京都大 25 30 55
北海道大 39 55 94
東北大 59 45 104
名古屋大 11 10 21
大阪大 17 13 30
九州大 12 8 20
東京科学大 138 84 222
一橋大 54 71 125
神戸大 5 4 9
合計 453 545 998

読み取れることが2つあります。ひとつは東京大学で私立が225人と公立93人の2.4倍になっていること。もうひとつは東京科学大学では公立138人が私立84人を上回ることです。東京科学大学は神奈川の公立高校にとって最大の進学先で、公立453人のうち30.5%を占めます。志望校を選ぶときに「難関国立大に強い」とひとくくりにせず、どの大学に強いのかまで見ておきたいところです。

京都大・大阪大・神戸大といった西日本の大学は、県全体でも55人・30人・9人と少なく、神奈川の受験生の進学先が首都圏に集中していることがうかがえます。

男子校6校で私立の59% ― 男女別の内訳

掲載された私立31校を男子校・女子校・それ以外(共学校・別学校)に分けると、進学者数の集まり方がはっきり分かれます。

区分 主な学校 現役進学者数 うち東京大
男子校(6校) 聖光学院・浅野・栄光学園・逗子開成・サレジオ学院・鎌倉学園 323 174
女子校(9校) 洗足学園・フェリス女学院・横浜共立学園・横浜雙葉・カリタス女子・湘南白百合学園・清泉女学院・鎌倉女学院・日本女子大学附属 99 36
共学・別学(16校) 山手学院・桐光学園・公文国際学園ほか 123 15

男子校6校だけで私立545人の59.3%、東京大に限れば私立225人の77.3%を占めます。女子校では洗足学園の59人が突出しており、女子校9校の合計99人のうち約6割が洗足学園1校です。共学校では山手学院21人、桐光学園18人、公文国際学園13人が上位で、進学率では公文国際学園の8.4%が共学校で最も高い数字でした。

学校公表値と照らすと「合格」と「進学」はどれだけ違うか

同じ学校について、学校が自校サイトで公表している数字と大学通信の現役進学者数を並べると、「合格者数」と「現役進学者数」の距離が見えてきます。3校で確認しました。

栄光学園 ― 合格・現役合格・現役進学の3段階が公表されている

栄光学園は進路ページで、大学ごとに「総数(合格者数)」「進学」「現役」「現役の進学」を分けて公表しています(2026年7月時点)。東京大学は合格者総数47人 → 現役合格40人 → 現役進学39人で、大学通信の39人と一致します。

大学 合格者総数 現役合格 現役進学
東京大学 47 40 39
東京科学大学(理工) 10 7 7
一橋大学 9 6 6
京都大学 6 5 5
北海道大学 5 2 2
東北大学 5 4 3
横浜国立大学 18 13 9

東京大学は合格者総数47人に対して現役進学は39人で、差は8人です。差が大きいのは横浜国立大学で、合格18人に対し現役進学は9人。合格しても他大学へ進む受験生が半数いる、ということです。学校案内の「合格者数」をそのまま進学実績と読むと、実態より多く見積もってしまうことがこの表から分かります。

浅野 ― 現役合格77人に対して現役進学76人

浅野は2026年度入試結果の内訳を学部別・現役既卒別に公表しています(2026年4月14日現在、卒業生281人)。難関10国立大について現役合格者数を足すと77人になり、大学通信の現役進学者数76人との差は1人(東北大学)でした。東京大学は現役合格32人・既卒6人で合計38人、このうち学校推薦型選抜が3人です。

大学 現役合格 既卒合格 現役進学
東京大学 32 6 32
東京科学大学 19 1 19
京都大学 7 2 7
一橋大学 7 2 7
東北大学 6 0 5
北海道大学 5 3 5

浅野の国公立大学全体では現役110人・既卒25人の合計135人、医学部医学科は現役15人・既卒3人の合計18人です。難関10国立大に関しては現役で合格した生徒のほぼ全員がそのまま進学していることが確認できます。

洗足学園 ― 卒業生241人のうち進学206人、浪人35人

洗足学園は第78回生(2026年3月卒業)の「進学先一覧」を大学別・学部別に公表しています(2026年4月3日現在)。在籍241人のうち進学206人・浪人35人で、難関10国立大への進学は東京大学26人、東京科学大学9人、北海道大学6人、一橋大学5人、京都大学4人、東北大学4人、大阪大学2人、神戸大学2人、九州大学1人の計59人。大学通信の59人と完全に一致します。

あわせて公表されている合格状況では東京大学が延べ28人(うち過年度生1人)となっており、現役合格27人のうち26人が進学した計算になります。合格者数と進学者数の差が小さい学校では、この2つの数字はほぼ同じ意味を持ちます。

公立25校との比較 ― 公立中高一貫5校の位置

掲載された神奈川の公立高校は25校で、現役進学者数の合計は453人。上位は横浜翠嵐99人(28.5%)、湘南82人(23.2%)、柏陽50人(16.0%)、横浜サイエンスフロンティア37人(16.2%)、厚木34人(9.6%)でした。

このうち中学受験の対象になる公立中高一貫校は5校です。

学校名 卒業生数 現役進学者数 進学率(%) うち東京大
神奈川県立相模原中等教育学校 150 29 19.3 7
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 228 37 16.2 8
横浜市立南高等学校 189 20 10.6 5
神奈川県立平塚中等教育学校 146 11 7.5 5
川崎市立川崎高等学校 111 10 9.0 0

5校の合計は107人で、公立453人の23.6%にあたります。中等教育学校である相模原・平塚の2校は卒業生全員が中学から入学した生徒ですが、横浜サイエンスフロンティア・南・川崎は併設型のため、卒業生数には高校から入学した生徒が含まれる場合があります。進学率をそのまま「附属中から入った場合の実績」と読むことはできない点に注意してください。

保護者・受験生への影響 ― この数字をどう使うか

この集計は2026年春の結果であり、2027年度入試の志望校選びでは「6年後の出口の目安」として使うことになります。使うときの注意点を4つ挙げます。

  • 卒業生数とセットで見る。現役進学者数だけを比べると卒業生の多い学校が有利に見えます。桐蔭学園高等学校は21人ですが卒業生901人で進学率2.3%、公文国際学園は13人でも卒業生155人で8.4%です。
  • 10大学に偏った指標であることを理解する。横浜国立大学・東京都立大学・横浜市立大学といった地元の国公立大や、早慶上理・MARCHへの進学はこの数字に入りません。神奈川の受験生にとって横浜国立大学は主要な進学先ですが、ここには表れません。
  • 空欄を0と読まない。未回答・未集計の学校があるため、表に載っていない学校や空欄の大学を「実績なし」と判断するのは誤りです。
  • 単年で判断しない。1学年の人数が150〜250人程度の学校では、数人の増減で進学率が1〜2ポイント動きます。学校公表の過去5年推移とあわせて見るのが安全です。

学校説明会では「○○大学△名合格」という延べ数が示されることが多いため、気になる学校については公式サイトの進路ページで現役・既卒の内訳が公表されているかを確認しておくと比較しやすくなります。栄光学園のように進学者数まで公表している学校、浅野のように現役・既卒を分けている学校、洗足学園のように進学先一覧を出している学校は、数字の読み違いが起きにくいといえます。

今後のスケジュール

2027年度入試に向けて、神奈川の中学受験に関係する日程は次のとおりです。

時期 内容
2026年11月〜12月 各校の出願受付開始(帰国生入試は11月実施校あり)
2027年2月1日 神奈川県の私立中学入試が解禁。2月1日は月曜日
2027年2月上旬 合格発表・入学手続き
2027年3月 2027年春の大学入試結果が各校サイトで順次公表
2027年7月〜8月ごろ 大学通信による2027年難関10国立大現役進学者数の集計・公表(例年の時期)

各校の合格実績は3月中旬から4月にかけて更新され、進学先が確定した5月以降に数字が固まる学校が多くなります。浅野は4月14日現在、洗足学園は4月3日現在の数字を公表しており、同じ春の実績でも基準日が違う点に注意してください。

よくある質問

Q. 「現役進学者数」と「合格者数」はどちらを見るべきですか。

A. 学校どうしを比べるなら現役進学者数です。合格者数は1人が複数の大学・学部に合格すると重複して数えられるため、延べ人数が実際の進学者より多くなります。栄光学園の例では東京大学の合格者総数47人に対し現役進学は39人、横浜国立大学は合格18人に対し現役進学9人でした。一方、その学校の受験層の厚みを知りたい場合は合格者数も参考になります。両方を併記している学校の数字が、もっとも読み違いが起きにくいといえます。

Q. 進学率が高い学校ほど「面倒見がよい」ということですか。

A. そうとは限りません。進学率は入学時の学力層に大きく左右されます。また、この指標は難関10国立大に限ったものなので、医学部や早慶上理、海外大学への進学が多い学校は数字に表れにくくなります。洗足学園は第78回生241人のうち進学206人・浪人35人で、海外大学への進学者も公表しています。進学率は学校の性格を示す1つの材料として見るのが適切です。

Q. 表に載っていない私立中高一貫校は実績がないのですか。

A. 違います。この集計は全国約4,300校へのアンケートに基づくもので、未回答・未集計の学校は掲載されません。神奈川県の令和9年度の生徒募集要項に載る私立中学校・中等教育学校は54校ありますが、大学通信の表に名前があるのは28校です。掲載されていない学校については、各校の公式サイトの進路実績ページを直接確認してください。

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出典

最終更新: 2026年10月30日。掲載内容は出典時点の公表情報に基づきます。最新の募集要項は各校公式サイトで必ずご確認ください。

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「倍率」「受験者数の推移」「合格可能性」「併願パターン」まで含めて、一人ひとりに合った本当に狙いやすい学校を見つけることです。